マツダが「SKYACTIV-D」を開発できた理由は「内燃機関が好きだから」今井優杏のエコカー☆進化論(14)(4/4 ページ)

» 2014年10月29日 11時00分 公開
[今井優杏,MONOist]
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割り切った結果のシングルターボじゃなかった

 そして2.2lと1.5lの大きな違いであるターボは、2.2lがツインターボのところを、1.5lはシングルターボを採用しています。

 ボンネット内のスペースに限りがありますから、この辺の割り切りはしょうがないかなと思ったら、ただのシングルターボじゃなかった。

 ターボの前に可変ノズル機構を設けた可変ジオメトリーシングルターボは、2つから1つに減ったターボ数を効率的にカバーするものです。そもそもターボというものは、排気ガスを利用してタービンを回すものです。すなわち排気ガスが少ない領域ではあんまり効果的じゃないということでもあります。

可変ジオメトリーシングルターボチャージャーユニット(左)と作動イメージ(クリックで拡大) 出典:マツダ

 しかしこの可変ジオメトリーシングルターボは、電気的に排気ガスの流量が少ないときにはノズルを絞って流速を上げて、向きも適正にコントロールしてタービン羽根に効率よく当てるので、きちんと過給圧を得られるという仕組み。口をすぼめてフーっと息を吐き出し風車を速く回すイメージかな。これでレスポンスやトルクに優れた走行が、低回転域から楽しめるのです。ちなみに暖気性能が必要とされるときには、ノズルを全閉にして排ガスをシリンダー内に戻すという芸当も可能です。

 また、燃費向上とNOx低減のための排気再循環(EGR)を高圧と低圧の2つで採用している他、水冷インタークーラーをインテークマニホールドに内蔵して吸気回路の距離と容量を低減するなど匠の技は枚挙に暇がありません。

高圧と低圧、2つのEGRシステムを採用 高圧と低圧、2つのEGRシステムを採用(クリックで拡大) 出典:マツダ

 この技術解説をしてくださったマツダのパワートレイン開発本部で新型デミオのエンジン&トランスミッションの開発を担当された新畑耕一氏は笑って、「予算が膨大にある会社じゃないですから、こうしてどうにか既存のものを使えないかと、そればっかり考えているんです」とおっしゃっていましたが、いやいや。だからこそ破格の価格でクリーンディーゼルを楽しめるわけですから。

 しかも今度のデミオはクルマとして、商品としての完成度もメチャクチャ高いです。

 走りがいいけど内装がね……と言われたのはもう、過去の話!

 ナビゲーションシステムを内蔵する「マツダコネクト」ももちろん全車に備え、しかもピニンファリーナ的な香りすらする内装に大注目!

新型「デミオ」の内装(クリックで拡大)

 もう走りだけじゃないです。完全に本命カー。これは売れますよ〜。

 で、なんでメリットの少ないディーゼルエンジンをマツダがわざわざ作ったかっていうと、多分マツダが社を挙げて「内燃機関が好きだから」。

 こんなシンプルかつ熱い情熱でクルマを作っているなんて、すごくすてきなことだと思いませんか?

プロフィール

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今井 優杏(いまい ゆうき)

レースクイーン、広告代理店勤務を経て自動車ジャーナリストに転向し、Webメディア、自動車専門誌に寄稿。そのかたわら、モータースポーツMCとしての肩書も持ち、サーキットや各種レース、自動車イベントなどでMCも務め、日本全国を飛び回る日々を送っている放浪系女子。自動二輪と自転車、両方の意味でのバイク好きでもある。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員、2013〜2014日本カーオブザイヤー選考委員。



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