変わる中国の現状とASEANとの関係知っておきたいASEAN事情(22)(2/2 ページ)

» 2014年11月07日 09時00分 公開
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一人っ子政策の緩和

 1979年以降、人口増加の歯止め策として中国で導入されてきた「一人っ子政策」は、過去30年間で約4億人の誕生が抑制されたとして、その成功が報道されています。しかし一方で、多岐にわたる深刻な社会問題を引き起こしました。強制堕胎、幼児殺害、児童売買などです。また、一人っ子に対する両親の過剰な期待からか「わがまま世代」を生み出す結果となっています。

 2012年には「世界の工場」を支えてきた労働年齢人口(15〜59歳)が初めて減少に転じ、少子高齢化問題の認識が一気に高まりました。ある意味では「課題先進国」ともいわれる日本よりもはるかに速いペースで反転しているといえます。

 そして、ついにこれらの状況から、2013年の全国人民代表大会で、一人っ子政策の緩和が発表されました。これは2014年から徐々に実行されています。夫婦のどちらかが一人っ子なら第2子までの出産を認めるという内容です。しかしながら、30年間に及ぶ一人っ子政策により生じたいびつな人口構成の是正には、やはり同じくらいの年数がかかるのではないでしょうか。

photo 一人っ子政策を奨励していた切手図案

汚職構造の刷新

 2012年に最高指導者となった習近金の下、腐敗・汚職を取り締まる中央規律検査委員会は聖域無き汚職捜査を行っています。これは習近金国家主席が清廉潔白な政治家であるのではなく、汚職捜査の名の下に、反対勢力の鎮圧、または独自路線に走った地方政府への是正を行っていると見るのが正しいでしょう。

 現在の中国では、共産党幹部から末端の役人、または民間企業レベルでもさまざまな不正にあふれています。日本人の感覚では間違いなく不正行為ではあるのですが、社会の仕組みの一部として成立している側面があるのも事実です。あらゆる事業行為に複数の所轄官庁が介在する中国では、“心づけ”を渡すことは、折衝をスムーズに進めるための知恵ともいえます。

 汚職構造が刷新されることは、社会の仕組みが刷新されることであり、たとえ、その範囲が一部だとしても、外国企業にとってはそれなりの影響があるのではないでしょうか。

photo 「ミスタークリーン」呼ばれる王岐山(共産党中央規律検査委員会書記)

活発な経済支援外交

 前述のインドシナ諸国だけでなく、中国では、アフリカ、中南米など、世界中の発展途上国を対象に積極的な経済外交が行っています。ダム&水力発電所、道路、港湾、通信など社会インフラ整備の資金の多くを中国が拠出しています。あまりに集中した投資に脱中国の機運が高まったミャンマーの例はありますが、中国からの経済援助は大半の国で好意的に受け止められ、親中国派の形成に大きく役立っています。

 華僑と呼ばれる中国からの移民やその子孫の存在も重要なポイントです。タイをはじめ多くのASEAN諸国の政治・経済において華僑は大きな存在です。軍事クーデターにより白紙撤回されてしまいましたが、タイのインラック前政権は、中国からの高速鉄道(もともとは日本の新幹線の技術ですが)導入のため、巨額の予算を計上していました。もちろんインラック元首相は華僑です。

 あらゆる意味で大国となった中国の一挙一動は、間違いなく周辺諸国へ大きな影響を与えています。それぞれの国でそれぞれの付き合い方を展開していますが、共通していることは中国への脅威がその根底にあることです。しかしそこは小国とはいえ、したたかなASEANの国々です。付かず離れずの微妙な距離感で中国との外交を行っています。


 2014年時点で、中国に進出した日系企業は2万3000社を超えています。では、5年後、10年後に中国で生き残るため、どのような事業プランが必要なのでしょうか。次回のコラムは、こうした視点で中国の日系企業の生き残り策を探っていきます。お楽しみに。



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