Scrach 2.0で“リレカチ”に挑戦!Scratch 2.0で体験! お手軽フィジカルコンピューティング(11)(1/3 ページ)

Webブラウザだけでプログラム開発から実行まで行える「Scratch 2.0」を用い、センサーの接続や外部デバイスのコントロールに挑戦!今回はリレーをカチカチ鳴らす“リレカチ”を通じて、制御技術の基本に触れます。

» 2014年11月13日 11時00分 公開
[今岡通博MONOist]
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 本連載は、Webブラウザ上でプログラム開発から実行までを行える「Scratch 2.0(以下、Scratch)」を用いた“フィジカルコンピューティング”入門です。電子回路があまり得意でない人でも取り組みやすい、センサーや外部デバイスと接続した作例を紹介しています。

 前回は「Scratchから外部機器に出力する」をテーマに、Scratchのプログラムで生成したオーディオ信号でLEDを点滅させてみました。一見、1秒間隔でLEDが点滅しているように見えますが、実は点灯している様に見える0.5秒の間でも、LEDは人間の目には見えない速さで点滅を繰り返しています。この信号を用いて他の外部機器を制御するといろいろと不都合が起こりそうですね。そこで今回はLEDの代わりにリレーを制御してみます。

リレーとは

 リレーとはコイルに電流を流すことにより、電磁石効果で接点を切り替える動作スイッチです。リレーといえば何人かの選手がバトンを継ぎながら走る競技がありますよね。英語では両者同じ「Relay」です。日本語ではこのリレーのことを継電器ともいいます。陸上競技のリレーはバトンをつなぎますが、こちらのリレーは電気信号を次の回路につなぐという意味で同じリレーと呼ばれているのでしょう。

 前回のトランジスタ1個の回路ではLEDを点灯させるので精一杯でしたが、このリレーを使えばもっと大きな電力を制御できます。またLEDは良くも悪くも電気信号に対する反応が早いので用途によっては不必要な情報も伝わってしまいます。リレーの場合は質量を持った接点が電磁石によって物理的に動きますので、慣性の法則であまり早い電気信号には追随できません。これがある意味、フィルタの役目を果たし、制御される機器側には好都合なときもあります。

 リレーは制御側と制御される側の電気的な分断を図る場合や、無線設備の高周波の切り替えなどにも使われています。まだ半導体がなかった時代にはリレーでロジック回路を構成し、計算機などを作っていた時代もありました。

 今回のタイトル「リレカチ」はLチカと同じノリで命名してみました。リレーの接点が切り替わるときに出る音にちなんだもので、検索してみた限り筆者が初めて使った造語だと思います。この記事の読者の皆さんで「リレカチ」を流行させて頂ければと思います。ただ、リレーのカチカチ音がクールだと思っているのは筆者だけではないみたいで、Maker Faireなどリレーを継電器として使うのではなく、ただカチカチとした音を楽しむだけの作品を見かけたことがあります。

「リレカチ」を楽しむ回路とスクリプト

 前置きが長くなりましたが、図1が今回作るシステムの概要です。

photo 図1 システム概要図

 Scratch2.0で生成したオーディオ信号をPCのイヤフォンジャックから取り出し、その信号でリレーを駆動させます。本稿ではブレッドボードにオーディオ信号でリレーを動作させる回路を組み立て、Scratch側にはこの回路を動作させるオーディオ信号を生成するスクリプトを作成します。

photo 図2 リレー内部(出展:Wikipedia)

 そして図2が今回使うものとは異なりますが、リレーの内部です。「Armature」と書かれたところがスイッチで言う共通端子です。「Contacts」が接点で共通端子の上下にあります。コイルに電流が流れていない状態では、共通端子はスプリングで引っ張られて上の接点に接触しています。共通端子と上の端子は閉じた(導通)状態にあります。

 このように電磁石に電流を流したときに導通が途絶える接点のことを「b接点(break contact)」や「常閉接点」などと呼びます。コイルに電流を流した状態では、共通端子は電磁石により引っ張られ、下の接点に接触します。このように電磁石に電流を流したときに共通端子と接触し導通する接点のことは、「a接点(arbeit contact)」ないし「常開接点」と呼ばれます。

photo 図3 今回使用するリレー「942H-2C-5DS」 リレー本体の側面に仕様や内部の回路図やピン配置図などが印刷されています(出展:秋月電子通商)

 図3が今回使ったリレー、シンダプレシジョン製「942H-2C-5DS」です。このリレーには全部で8本のピンがあり、対面のピン間は0.3インチですのでDIPタイプのICと同じですから、ブレッドボードの中央の溝を挟んで装填できます。ブレッドボードを使った電子工作には好都合です。

 図4は上から見たときの、リレーのピン配置と回路図との対比を示しています。11番ピンと12番ピンがコイルです。このピンに5Vの電圧をかけると電磁石効果で接点を引き付けます(トランジスタのような極性はありません)。3番ピンが共通接点、5番がb接点(常閉接点)、1番がa接点(常開接点)となります。

photo 図4 リレーのピン配置

 対面の3列も同様ですが、両者は電気的には独立しています。それぞれ電気的にはつながりのない回路を同時に2系統、切り替えられるというのです。あくまでもコイルはひとつしかありませんので、個別に接点を切り替えられるということではありません。切り替わるタイミングは同時です。

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