モノづくり改革は交差点で起こる――シーメンスPLM、旧LMSとの業務統合の状況明かすPLMニュース

シーメンスPLMソフトウェアは記者説明会を開き、LMS社との合併後の業務統合の状況や今後の注力ポイント、また海外および日本での市場状況などを語った。

» 2014年11月17日 15時00分 公開
[加藤まどみ,MONOist]

 シーメンスPLMソフトウェアは2014年11月13日、ユーザーカンファレンス「Siemens PLM - Simulation & Test Performance Engineering Conference 2014」に合わせて記者説明会を開催した。米シーメンスPLMソフトウェアのシミュレーションおよびテストソリューション担当シニア・バイスプレジデントでベルギー シーメンスPLMソフトウェアのCEOであるヤン・ルリダン博士と、シーメンスPLMソフトウェア日本法人の代表取締役社長で米Siemens PLM Softwareのバイスプレジデントである堀田邦彦氏がLMS社との合併後の業務統合の状況など語った。

米シーメンスPLMソフトウェア シミュレーションおよびテストソリューション担当シニア・バイスプレジデント 兼 ベルギー シーメンスPLMソフトウェア CEO ヤン・ルリダン博士

 シーメンスPLMソフトウェアが買収したLMS International(LMS社)について「合併に伴う統合は非常に順調に進んでいる」(ルリダン氏)という。シーメンスにとってはLMS社が有するテスト&メカトロニクス分野が競合他社との差別化ポイントになっているという。

 LMS社は機構解析ソフトウェア「LMS Virtual.Lab Motion」などの開発企業。30年前にベルギーのルーヴェン大学からのスピンアウトによって設立され、2013年1月にシーメンスに買収された。日本法人のエルエムエスジャパンは2014年8月にシーメンスインダストリーソフトウェア・シミュレーション&テストと名称を変更している。なお今回のイベントは、従来エルエムエスジャパンが開催していたもの。

 売り上げは40%がアジア、40%がヨーロッパ、残り20%が日本。現在アジアが最も成長率が高いという。ビジネスとしても2桁成長を達成していおり、日本に関しては過去最高の売り上げを達成しているということだ。

 売り上げ増加の要因については、地域別ではアジア、特に中国が成長のけん引役となっている。次に分野でいうと先行開発に関する売り上げが伸びている。例えば自動車であれば燃費と乗り心地を同時に実現するような技術の開発に関する分野だという。航空機でいうとエアバスA350に代表されるような、炭素繊維を利用する機械設計などでも使われている。3点目を挙げるとシステムエンジニアリングに関するところだという。これはモノづくり自体の改革をしていく、あるいはプロセス全体をつなげていくといった用途であるという。

シーメンスPLMソフトウェア日本法人 代表取締役社長 兼 米Siemens PLM Software バイスプレジデント 堀田邦彦氏

 日本に関しては「旧LMS部門と、NXやTeamcenterを扱う従来のシーメンスPLMの両方の部門において過去最高の売り上げを達成している」(堀田氏)。日本においては自動車およびそのサプライチェーンが、より積極的に投資を行っている。とくにシステムエンジニアリングの先行的なプロジェクトを進めているという。またデジタルマニュファクチャリングへの展開、設計から製造への展開といったところも成長の基盤になっている。産業としては航空機産業が挙げられる。国産ジェット機などの開発設計支援や衛星の地上試験などでも採用があるという。

V字プロセスを統合する基盤を作る

 「モノづくりにおける改革はインターセクション(交差点)から起こる」とルリダン氏は言う。つまり矛盾した要求が重なる点だ。自動車に例えると、環境に優しく、乗って楽しいというのはある意味矛盾した要求だ。ルリダン氏は「これを解決していくところに改革がある」という。

 それを実現する上で最も重要なキーワードはシステムエンジニアリングだという。これはいわゆる、要求性能、設計、詳細設計、そして検証までをつなぐことができるということだとする。

 モノづくりにおけるV字プロセスがあるが、現状では機械設計や組み込みソフトウェア、電気系統で部署やプロセスが分かれていることが多く、それぞれのV字は独立している。また始めに市場調査などに基づく要求仕様があり、詳細設計、解析、実験へと続くが、現時点ではそれらに使用するツールもバラバラだ(以下の図)。

シーメンスPLMソフトウェア製品におけるV字プロセス

 「システムエンジニアリングとは、それらモノづくりのプロセスをつなげていく」ことだとルリダン氏は言う。つまり、まずV字の左上では0Dまたは1Dツールの「LMS Imagine.Lab」が要求仕様から概念設計につなげていく。またV字の底では3次元CAE「LMS Virtual.Lab」が詳細設計を提供し、右側では「LMS Test.Lab」で実時間での検証を行うという具合だ。

 詳しくいえば、機械設計やソフトウェア開発というように分かれているプロセスのいかに早い段階でキャリブレーションを早くかつ正確に行うかということだ。これをシステムエンジニアリングで実現していきたいという。「さらにシステムエンジニアリングを拡大して、要求仕様から詳細設計へと段階的に進めていく流れをつなげていきたい。その結果としてシーメンスの提供するPLMソフト『Teamcenter』と着実に連携して、インフラとして提供していく方向に向かいたい」(ルリダン氏)とする。

 「一番のチャレンジは会社が合併した後も継続して成長できるかどうかだが、2年間を振り返ると順調に成長しており、さらに旧LMSとシーメンスPLMとのシナジーがシステムエンジニアリングというキーワードをベースに進んでいる。また母体であるシーメンスも継続的に人的なものを含めた成長を加速する投資を行っている」ということだ。

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