トヨタの燃料電池車「ミライ」は「あえて4人乗り」、プレミアム感と走りを重視日本科学「未来」館で発表(3/4 ページ)

» 2014年11月18日 18時30分 公開
[朴尚洙,MONOist]

2つの「世界初」を採用したFCスタック

 ミライに採用されたTFCSは、新開発のFCスタックなどと現行のハイブリッド車の技術流用の組み合わせとなっている。

 FCスタックでは、燃料電池セルの面内での発電を均一化する3Dファインメッシュ流路を採用するなどして大幅な小型化を実現。2008年に発表した実証実験車「FCHV-adv」のFCスタックと比べて2.2倍の出力密度となる3.1kW/l(リットル)を達成した。この他、燃料電池セルに送り込む空気の湿度を制御する方式を、燃料電池セルの内部で循環する内部循環方式に変更することで、FCHV-advで使用していた加湿器を省いた。3Dファインメッシュ流路の採用、加湿器レスとも「世界初」(同社)だという。FCスタックの最高出力は114kWとなった。

左の写真は、3Dファインメッシュ流路(写真内左)と従来の燃料電池セルの流路(写真内右)の模型による比較。右の写真は、FCHV-advで使用していた加湿器で、ミライではこのユニットが省かれている(クリックで拡大)

 このFCスタックで発電した電力を、走行用モーターの動作に必要な電圧である650Vに高める昇圧コンバータもミライ向けに新開発した。ただし、走行用モーター(最高出力113kW/最大トルク335Nm)や、インバータなどのパワーコントロールユニット、ニッケル水素電池はハイブリッド車のものを流用している。かつては億円単位と言われた燃料電池車の価格を、税込みで約720万円まで低減できたのは、これらの既存技術の流用が背景にある。

FCスタックと昇圧コンバータを一体化したユニット(左)とミライの水素タンク(クリックで拡大)

 水素タンクは、FCHV-advでも耐圧70Mpaのものを使用していたが、ミライでは貯蔵性能を約20%向上した。搭載する2本の水素タンクで合計122.4lの水素を充てんできる。

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