吸引式マウス「紫電改」が圧倒的スピードで優勝、若手の躍進も目立つ大会に第35回全日本マイクロマウス大会 リポート(1/3 ページ)

世界最古とも言われるロボット競技会「全日本マイクロマウス大会」が開催された。大会には、過去最大258台のマイクロマウスが参加。マイクロマウスクラシック競技エキスパートクラスで、吸引機構を搭載した「紫電改」が優勝。その他にも、若手エンジニアの活躍が目立つ面白い大会となった。

» 2014年12月08日 11時00分 公開
[三月兎,MONOist]
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 2014年11月22、23日の2日間、東京工芸大学厚木キャンパスにおいて「マイクロマウス2014 第35回全日本マイクロマウス大会」が開催された。今回からマイクロマウスハーフサイズ競技に「フレッシュマンクラス」が新設されたこともあり、過去最大の258台が参加した。マイクロマウスクラシックエキスパートクラスでは吸引機構を搭載した「紫電改」が初優勝。その他にも、若手エンジニアの活躍が目立つ面白い大会となった。

photo 画1 第35回全日本マイクロマウス大会

 マイクロマウス大会は、世界で最も古い歴史を持つロボット競技会だ。

 1977年にIEEE(米国電気電子学会)が、当時の最先端テクノロジーだったマイクロプロセッサの可能性を検証するため、「マイコンを搭載した移動体が、迷路を自律で走行し、スタート地点からゴールまで走破する」競技を提唱した。

 日本では1980年にニューテクノロジー振興財団の主催で「第1回 全日本マイクロマウス大会」が開催された。「これまで述べ1万人におよぶエンジニアがマイクロマウス競技にチャレンジした」(マイクロマウス委員会 委員長 芝浦工業大学特任教授 油田信一氏)という。

 この競技に出場するロボットがマイクロマウスである。マイクロマウスは、手のひらサイズの小さな走行体に、複雑な迷路を走破する知能を備えた自立(selfcontained:動作に必要な機能を全て自分で持っていて移動できる)型ロボットだ。

 本誌MONOistで2012年5月〜2013年7月まで掲載した連載、「マイクロマウスで始める組み込み開発入門」を読んで、「まだ続いていたのか!」と驚いた方も多かったようだ。初期のマイクロマウスは、今よりもはるかに大きく重量は3kg以上あったそうだ。2000年以降、小型軽量化が急速に進み、今では100g以内が主流。中には10gを切るマウスもある。

photo 画像2 手のひらサイズの走行体に複雑な迷路を解く知能を搭載した自立型ロボットが「マイクロマウス」だ

 35年の間にハードも開発環境も大きく変化したが、競技ルールは第1回大会から変わっておらず、ロボットが自立で未知の迷路をスタートからゴールまで走行し、そのタイムを競う。持ち時間が設定されており、その時間内で迷路の探索とタイムアタックを行う。持ち時間はフレッシュマンクラスとエキスパートクラス予選が7分、エキスパートクラス決勝が5分だ。

 ゴールは迷路中央に設定されており、回廊も設けられているため、古典的な迷路攻略法である「左手法(左手を壁に当てて歩いて行けば、いつかは出口にたどり着く)」が使えない。

 迷路は1区画180mmの16×16区画で構成されている。ロボットのサイズは、縦横250mm以内と定められており、重量と高さには制限がない。ロボットの規定サイズが迷路の区画よりも大きいのは、昔は壁の上部にフレームを張り出し、上から壁を検知する技術が主流だったからだ。

 ゴールへ至る経路は複数あり、マイクロマウスはいくつもある経路の中から“最短経路”を見つけタイムアタックする。

photo 画像3 16×16で構成される256区画の迷路を解析し、中央のゴールを目指す

 2009年には従来競技の2分の1サイズの迷路を走る「マイクロマウス(ハーフサイズ)」がスタートした。それ以来、“マイクロマウス”はハーフサイズマウスに向けられる用語となり、従来のサイズは「マイクロマウスクラシック」と改称された。本稿においては、自立で迷路を走行するロボットを総称して、“マイクロマウス”と表記する。

 今年からマイクロマウスハーフサイズにフレッシュマンクラスが新設された。その影響もあり、参加者数は過去最高の258台を記録した。

photo 表1 全日本マイクロマウス大会の参加者数推移グラフ ※1980〜2008年のデータに関しては、ロボコンマガジン 2009年11月号「マイクロマウス30年史」より引用。なお、2009年以降は筆者取材により得たデータである
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