タカタのエアバッグ問題が示唆する今後の自動車開発のリスク和田憲一郎の電動化新時代!(14)(1/3 ページ)

報道が過熱する一方で、原因特定や今後の見通しが不明のタカタ製エアバッグ問題。自動車の内装設計技術者として、インパネや助手席用エアバッグの開発に携わったことのある和田憲一郎氏に、今回のような問題が起きる要因や、今後の自動車開発の課題について整理してもらった。

» 2014年12月10日 08時00分 公開

発端は2005年

 国内外で大きな注目を集めているタカタ製エアバッグ問題だが、先日開かれた米国政府の公聴会によれば、タカタは2005年にエアバッグの異常に気付き、ホンダは2007年に3件の破裂事故が起きたことを受けて2008年11月にリコールに踏み切ったと報道されている。

 しかし、その発端から約9年が過ぎているにもかかわらず、今夏からリコール処置が多くなったタカタ製エアバッグ問題は、ここにきて一段と深刻さを増している。原因についてもいまひとつはっきりしておらず、「インフレータのガス発生剤の成型工程が不適切または成型後の吸湿防止措置が不適切」という事象がリコール原因として挙げられているだけだ。

 筆者は、以前に内装設計技術者としてインパネや助手席用エアバッグの開発に携わった経験がある。そこで、このような問題が起きる要因や、今後の自動車開発の課題について考えてみた。

衝突から0.02秒で開くエアバッグ

タカタがWebサイトで紹介しているエアバッグの仕組み タカタがWebサイトで紹介しているエアバッグの仕組み(クリックでWebサイトを開きます)

 近年、1台の車両に複数のエアバッグが搭載されるようになっている。運転席用や助手席用だけでなく、サイドエアバッグやサイドカーテンエアバッグなどその種類はさまざまだ。

 ただし、今回問題となっているのは運転席用エアバッグや助手席用エアバッグである。その動作は次のような手順になっている。クルマが衝突した直後、ECU(電子制御ユニット)やセンサーからの信号を受け、インフレータに着火してガスを発生させ、15m〜20m秒(0.015〜0.02秒)後には、エアバッグ本体が膨らんで展開する。乗員はこのエアバッグに守られることにより、ステアリングやインストルメントパネル(インパネ)などの車両本体に身体を衝突させずに済み、負傷を防止したり軽減したりできる。

 今回はそのガス発生装置であるインフレータに原因があるのではと言われている。真因は調査機関に委ねるとして、このような問題が起きる要因や、今後の自動車開発の課題について考えてみたい。

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