「クラウド・ネイティブ」たれ――センサーとクラウドを活用して、在庫管理と歩きスマホ事故防止をビルドアップする第5回 Device2Cloudコンテスト 決勝大会リポート

デバイスとクラウドを活用したシステムの企画からプレゼン、開発までを競う学生競技会「第5回 Device2Cloudコンテスト」の決勝大会が開催された。本稿では、上位チームのプレゼン内容を中心に決勝大会の模様をお伝えする。

» 2014年12月17日 16時47分 公開
[MONOist]

 2014年12月6日、東京電機大学 東京千住キャンパス丹羽ホールにおいて、デバイスとクラウドを活用したシステムの企画からプレゼン、開発までを競う学生向け競技会「第5回 Device2Cloudコンテスト」の決勝大会が開催された。

 同コンテストは今回(2014年)で5回目を迎える。参加する学生らは、マイコンとセンサー、そして、ネットワークサービスとの連携などを活用した組み込みアプリケーションを考案しなければならない。

 第5回大会は、例年と同じような期間で募集開始と予選審査などが行われた。毎年同時期に開催することで、教育の一環としての参加を促す狙いだ。予選審査には10チームがエントリー。作品のプレゼンテーションビデオと構想設計書を提出し予選審査が行われた。上位4チームが今回の決勝大会に進出し、1チーム15分間のプレゼンテーションを実施。最終審査により優勝チームが決定した。

 ここでは、優勝した優勝したE-Factory(中国職業能力開発大学校)の「圧力センサーを用いた自動発注システム」と、準優勝の優勝したD2K(拓殖大学)の「Security Choker」、それぞれのプレゼンテーションを紹介する。

photo 優勝したE-Factory(中国職業能力開発大学校)

冷蔵庫内の在庫を管理する

 優勝したE-Factoryが企画開発したシステムは、圧力センサーを用いて、冷蔵庫など倉庫にある在庫を管理し、自動的に発注するシステムである。在庫管理を楽にできるように工夫されている。

 圧力センサーやZigBeeを使い、Armadilloにて処理や表示することでクラウドと連携し機能する。冷蔵庫に設置するデバイスは、3Dプリンタで製作されており、モノづくりへのこだわりも感じられる。このデバイスに組み込まれた圧力センサーで商品の重さをモニタリングし、商品の在庫状況を管理する。これによって、一升瓶などの大容量な容器の残量も管理できる。

photo 優勝したE-Factory(中国職業能力開発大学校)のプレゼンテーション

 商品の情報登録はAmazonの商品情報APIを利用している。このAPIを利用することで商品の情報(メーカー名、容量、単位、個数など)を簡単に収集でき、システムへの登録が容易である。手元に商品がある場合には、バーコードを読み取ることで簡単に登録できる。

 このシステムは、最近話題となっているアルバイトなどの労働力不足に対するソリューションである。飲食業における作業を軽減し、ミスを減らすことが期待される。圧力センサーとZigBeeといった安価なデバイスを用いているや、商品ごとの管理への適用にも可能性を感じる。

歩きスマホの事故を未然に防ぐ

 準優勝となったD2Kが企画開発したシステムは、歩きスマホでの衝突や暗闇での事件を未然に防ぐシステムである。流行のウェラブルデバイスとして仕上げてきており、会場での注目度は一番であった。

 「SecrtyChoker」と名付けられたデバイスは、センサーで周辺を認識することで各種サービスを実現している。赤外線センサーで利用者の周辺への接近を、光量センサーによって利用者付近の明るさを検知している。この検知結果を利用し、利用者に対して障害物などの接近を知らせることだけでなく、クラウドを利用し周辺の人とも情報を共有している。

 周辺の人に対しては、SecrtyChokerに取り付けられた青いLEDを点灯させることで、自分の存在を知らせる。自転車でいうライトや反射板のようなものである。またクラウドを利用するで、暗く危険な場所の情報を共有できる。近年の自動車における渋滞や事故の発生場所共有のように、「歩行者によって生成された情報の共有」を活用したサービスの創成が期待される。

 このデバイスはSecrtyChokerというように、首に巻く首輪である。審査員などからも質問が多くあり、装着に関しては抵抗感がある。しかし、ウェラブルとしてセンサーなどの取り付け位置としてはベストだという。頭や腕、胸などいろいろな場所は考えられるが、インパクトという意味でも記憶に残るデバイスであった。

photo 準優勝したD2K(拓殖大学)のSecurity Choker

 今回のコンテストでは、冷蔵庫を取り上げたチームが2チームあった。スマホアプリコンテストなどとは異なり、実際に存在するモノを取り上げ、いかにしてクラウドと連携させるのかを競うこのコンテストならではといえる。冷蔵庫内の情報を可視化するサービスはインターネット創世記から多く登場していたが、現在は安価なセンサーと便利なクラウドを活用することで開発の難易度も下がり、利用者によりよい体験を提供しやすい時代となったと感じた。

photo 決勝大会出場チームと審査委員の集合写真

 モノが主役でなく、利用者が主役であり、その体験の価値が重要であることを、学生も認識してきている。今回の優勝チームは、利用者である販売店の店員や経営者がうれしいシステムを、センサーとクラウドを活用し実現してみせた。今回参加した学生たちが現場で活躍することを楽しみにしている。

 クラウド・ネイティブな組み込みエンジニアを生み出す学生コンテストとして、次回も期待したい。

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