サステナブルなモノづくりの実現

1次構造物、クラッシュ構造物にCFRPを適用して軽量化しようCAEイベントリポート(1/2 ページ)

軽量化に有効なFRPの適用箇所や適切なシミュレーション方法について、本田技術研究所が語った。

» 2014年12月25日 08時00分 公開
[加藤まどみMONOist]

 2014年11月13日にシーメンスインダストリーソフトウェア・シミュレーション&テストが主催した、解析関連ソリューションLMSのユーザーイベント「Siemens PLM - Simulation & Test Performance Engineering Conference 2014」では、基調講演で本田技術研究所 四輪R&Dセンター 第0技術開発室 第2ブロック 主任研究員の漆山雄太氏が「CFRP応用の自動車車体軽量化とCAE」と題した講演を行った。CFRP(炭素繊維強化プラスチック)をはじめとするFRP(繊維強化プラスチック)の解析手法などについて講演した。同氏によると、CFRPを一次構造およびクラッシュ構造に採用することが軽量化には効果的だという。またFRPの強度解析においては、損傷力学を取り入れたメゾレベル(ミクロとマクロの中間レベル)のシミュレーションが有効だと述べた。

本田技術研究所 四輪R&Dセンター 第0技術開発室 第2ブロック 主任研究員 漆山雄太氏

ボディの軽量化は正のスパイラルを生む

 今後ますます厳しくなる温室効果ガス削減要求やエネルギー戦略へ積極的に対応するため、自動車メーカー各社は内燃機関の効率向上やハイブリッド化といった駆動効率の向上や、EVや燃料電池車といった代替技術の開発、そして走行抵抗の低減に取り組んでいる。走行抵抗に関する取り組みは、大きく「軽量化」「空気抵抗の低減」「転がり抵抗の低減」の3つとなる。

 自動車への投入エネルギーのうち30%がエンジンの出力仕事となり、さらにそこから駆動系損失と走行抵抗によって10%ロスするため、最終的に駆動に使われるエネルギーは投入エネルギーの20%となる。これに対して軽量化しても、燃料削減効果は一見小さく思える。だが漆山氏は「自動車全体へのフィードバックを考えることが非常に重要」だという。ボディが軽くなればタイヤのサイズも小さくでき、ブレーキやタイヤホイールも小さくなる。パワーステアリングのアシスト量などもトータルでダウンサイズになるということだ。最終的にパワートレインの出力も下げることができ、軽量化が軽量化を生むという正のスパイラルが生じる。

 軽量化はどこまで可能かだが、スチールボディ構造の重量を100%とすると、将来的にはスチールのままで最大25%軽量化できるという。さらにアルミニウムにすれば40%、マグネシウムであれば55%の削減が可能だ。中でも繊維方向に偏りのない等方性CFRPを使えば60%、UD(一方向性)のCFRPであれば80%も重量を削減できるという。

 このCFRPを適用する箇所については、漆山氏はあえて1次構造物、2次構造物、クラッシュ構造物と分けて考えるべきだという。その場合、CFRPは1次構造物とクラッシュ構造物への適用が妥当だという。1次構造物は構造物自身の重さに比べて大きな積載量を担うところである。クラッシュ構造物は車体の前後などに配置して、構造物としての負荷は高くないが衝突時に負荷を受ける部分である。2次構造物はそれ以外の構造である。これらの中では、1次構造物、クラッシュ構造物にCFRPを適用することで、重量軽減効果が高くなるという。

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