「生産革命」で狙う“ヒト”オートメーション化の世界スマートファクトリー(3/3 ページ)

» 2014年12月26日 09時00分 公開
[三島一孝MONOist]
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卓球ロボが示した“制御の力”

 オムロンはFA(ファクトリーオートメーション)領域における制御技術の主要企業としてさまざまな取り組みを進めている。従来は工場の製造装置や生産ラインは、ハードウェアとしての機械による影響度が高かった。しかし、オムロンは製造のノウハウや付加価値を知見化し、それを制御技術として「製造のノウハウそのものを提供する」取り組みを進めている。制振制御や二重倒立振子など既に提供を開始している技術などもあるが「制御の力」を象徴する取り組みが、同社がCEATEC JAPAN 2014で出典した「ラリー継続卓球ロボット」だ。

CEATEC オムロン卓球ロボット

 このラリー継続卓球ロボットは、ラリーを長く続けるためにロボット自身が相手の位置や向かってくるボールの挙動などを総合的に判断し、相手の打ちやすい場所へボールを打ち返すというものだ。同ロボットには人感センサー、ステレオカメラ、パラレルリンクロボットなどが利用されているが、ほぼ全ての機器が汎用品という構成。向かってくるボールがどこに飛んでくるのか、また相手はどこにいるのかという認識と、その情報を基に自分のラケットをコントロールする、というような複雑な動作のほとんどを制御技術によって成し遂げている(関連記事:オムロンが「卓球ロボット」で訴えたかったもの)。

人の動きを制御技術でコントロール

 今までは、オムロンのこれらの製造ノウハウの知見化や制御技術は、対象が機械であるため、機械生産の領域に限られていた。しかし、消費者のニーズが多様化し変化が激しいものや多品種小ロットが求められるもの、また技術的に高度さが求められるものなど、人手による生産の領域はまだまだ広い。

 オムロンにとっては、サイバーダインの技術を活用できれば、これらの「人手による生産」の領域に進出できる可能性が生まれる。熟練技術者のノウハウをサイバーダインの技術により抽出し、それを知見化し制御技術として提供することで、新人技術者や海外拠点の技術者の一斉指導を行ったり、人手によるセル生産そのものをロボットで代行したりすることが可能になる。また、人手で行った方がいい部分や機械で行った方がいい部分を組み合わせた協調生産ラインなどを従来より抜本的に短い時間で構築することも可能だ。

 オムロンとサイバーダインの会見では「生産革新」については「まだまだこれから」ということを両社の社長は強調したが、目指す世界は“人手による生産領域のオートメーション化”ということがいえるのではないだろうか。

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