特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2015年01月22日 11時00分 公開

IoT観測所(5):産業機器向けIoT団体「IIC」、その狙い (2/2)

[大原 雄介,MONOist]
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 GEがどんな形でこのビジョンを進めているかについて「Industrial Internet:Pushing the Boundaries of Minds and Machines」というホワイトペーパーが、日本語版も提供されている(「インダストリアル・インターネット ―人と機械の境界が融合する」)

 同社はIndustrial Internetを第3の波(第1の波が産業革命、第2の波がインターネット革命)と位置づけており、このIndustrial Internetの市場規模は全世界のGDP合計(約70兆ドル)の46%にあたる32.3兆ドルある、と推定している。

 実はこうした動きを見せているのはGEだけではない。ドイツ政府もやはり2012年頃から「Industry 4.0」というキーワードを提唱しており、これに向けて産業界全体が動き出している(ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」)。そして。この“Industrial Internet”と“Industry 4.0”は非常に近い位置にいる。

 GEは医療機器やエンジン、発電設備などのいくつかの有力な製品分野は抱えているとはいえ、基本的にはソリューションの会社であり産業界全体をカバーしているわけではないので、さまざまな会社と協業してこれらのビジョンを進めてゆくことになる。

 そこでGEが取った手段は、開発したIndustrial Internet向けのソフトウェアプラットフォームである「Predix」を「2015年にあらゆる企業で利用可能にする」事を発表したことだ(「GE、インダストリアル・インターネット向けプラットフォーム「Predix」を全ての企業で利用可能に」)

 GEは医療や航空機用エンジン、発電所設備などの分野でかなりの実績を持っており、当然これはPredixプラットフォームにも反映されている。逆に言えば競合メーカーが同程度の機能を持つプラットフォームを開発するためには、相当の投資を行う必要があるが、この決断により競合メーカーはPredixをそのまま利用することが可能になり、Predixと同等レベルまで機能や品質を引き上げるための投資が不要になる。

 逆に言えば、そうした投資を自社のアプリケーション開発に投じることで、差別化が可能になる。しかもそうしたアプリケーションは、同じPredixを利用する別の環境でも利用できる可能性がある。つまりPredix上で動くアプリケーションの外販、という道が開けるわけだ。これはWindowsやAndroid、iOSといったPC/スマートフォン用OSと同じビジネスモデルである。

 もちろん、この判断はGEにとってもメリットになる。同社の最も得意とする分野は、APM(Asset Performance Management:資産管理)の効率化である。つまり先ほどのエンジンの例で言えば、センサーを大量にエンジン(や航空機)に搭載、データを記録した後で分析を行い、改善提案や保守マネジメントを行う分野である。1台2台のエンジンを対象にしてもビジネスとして成立しないが、台数が増えるほどビジネスとしては大きくなってゆく。つまりPredixを広く提供することで、同社のAPMの対象とするシステムが増えれば、そのままビジネスとして大きくなってゆくわけだ。

 先のプレスリリースをもう一度見直すと、後半にちょっと面白いことが書いてある。「PredixソフトウェアをCiscoのネットワーク製品に統合して」とあり、CiscoのルータにPredix対応ソフトウェアを統合することが明らかにされている。また、Predix対応エッジ・デバイスのリファレンスデザイン開発をIntelと行い、さらには、Softbank/Verizon/Vodafoneとの提携も発表している(AT&Tとの提携は既に発表している)。

 これで、IICの設立メンバー5社のうち4社がつながった事になる。プレスリリースに唯一名前がないのはIBMだが、GEの本丸であるデータ分析には当然ながら高い計算能力を持つサーバが必要になり、IBMはそれを提供できる。恐らく今後、GEでなく自社でデータ分析を行いたいという企業も当然出てくるだろうし、その際にはIBMが何らかのソリューションを(GEと共同で)提供しても不思議ではない。

 要するにIICというのはGEのエコシステムパートナーのためのフォーラムというわけだ。

 この原稿執筆時点で既に、設立メンバー以外に約120社もの企業が参加している(IIC:Members)。ちなみに参加費用はそう安くない。年会費は5000ドル(年間売り上げが5000万ドル未満の企業の場合。5000万ドル以上の場合の年会費は5万ドル)で、研究機関あるいは非営利組織の年会費は2500ドル、政府機関は1万2000ドルである。

 設立から1年たたずに、これだけの費用を支払うメーカーや組織が100以上もある、というあたりがいかにIICに参加することに魅力があると見なされている、分かろうというものである。国内でも富士フイルム、富士通、富士電機、日立、三菱電機、NEC、東芝といった、名だたる産業機器メーカーが既に加盟している。

 産業機器向けのIoT団体は、前回紹介したOICとはまた違った様相を示しているのがお分かりいただけるかと思う。

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