知っているようで知らなかった文章作成術のキホン(その1)レイコ先生の「明日から使える! コミュニケーションスキル」(11)(2/4 ページ)

» 2015年01月23日 11時00分 公開
[小山新太/MPA所属 中小企業診断士,MONOist]

主語と述語を近づける

 分かりづらい文章の原因の1つに「主語と述語が離れている」ことがあります。主語と述語が離れていると言ってもピンとこない人もいると思いますので、例文2を見てみましょう。


【例文2】私は、昨夜仕事で遅く疲れていたにも関わらず娘の笑顔が見たかったので、眠い目をこすりながらなんとか寝床から起き上がった。

 例文2の主語は「私」で、述語は「起き上がった」です。「私」が文の最初にあり、「起き上がった」が文の最後にあります。これが「主語と述語が離れている」状態です。この文章は、主語と述語が離れているため分かりづらい文章になるのですが、恐らくこの文章に大きな違和感があった人は少ないでしょう。それは、日本語の特徴として主語と述語の間に補足的な情報を入れることができるため、多くの人が当たり前のように主語と述語が離れた文章を作成しているからです。

 例文2を分解してみると「昨夜仕事で遅く疲れていたにも関わらず娘の笑顔が見たかったので、眠い目をこすりながらなんとか寝床から」の部分が補足情報になります。

 例文2の主語と述語を近づけてみると、以下のようになります。

 昨夜仕事で遅く疲れていたにも関わらず娘の笑顔が見たかったので、眠い目をこすりながらなんとか寝床から私は起き上がった。

 主語と述語を近づけても、分かりやすさはそんなに変わらないと思った人もいるでしょう。では次に例文3を見てみましょう。

 【例文3】田中が私が日頃から尊敬している先輩の鈴木さんを私の親友の山田に紹介をした。

 例文3も主語と述語が離れた文章ですが、「田中が私が」と文が始まるため、「紹介した」の主語が「田中」なのか、「私」なのかが分かりづらくなっています。じっくり読めば主語が「田中」であることは理解できますが、急いで読んだ場合は「私」が主語だと勘違いしてしまう可能性があります。しかし、以下のように主語と述語を近づけることで、読み手が誤解することを防げます。

 私が日頃から尊敬している先輩の鈴木さんを私の親友の山田に田中が紹介をした。

 例文2と例文3は、どちらとも主語と述語が離れた文章でしたが、なぜ例文3の方が分かりづらかったのでしょうか。それは、例文3は、複数の名前が補足情報として入っているため、情報の関係性が複雑になっているからです。一方、例文2は、関係性がシンプルなので主語と述語の間に長い補足情報が入ってもそれほど読み手は戸惑うことはありません。

 既に説明をしたように、日本語は主語と述語の間に補足情報を入れることができるため、意識をしないと主語と述語が離れた文章を作成してしまいます。日常生活はそれで問題ないのですが、大量かつ複雑な情報を扱う仕事では、読み手に誤解を与えてしまう原因になります。主語と述語を近づけて、読み手に誤解を与えることがない分かりやすい文章を作成するようにしましょう。

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