運動の記憶や学習を担う神経回路に必須なたんぱく質を発見医療技術ニュース

慶應義塾大学の柚粼通介教授らの研究グループは、運動の記憶や学習を担う神経回路に必須なたんぱく質「C1ql1」を発見した。

» 2015年02月06日 08時00分 公開
[MONOist]

 慶應義塾大学は2015年1月22日、同大医学部生理学教室の柚粼通介教授と掛川渉専任講師らが、運動の記憶や学習を担う神経回路に必須なたんぱく質「C1ql1(シーワンキューエル1)」を発見したと発表した。

 人間の脳内では、無数の神経細胞が「シナプス」を介して互いに結合し、記憶・学習に必要な神経回路を形成している。近年、発達障害や精神疾患の原因の1つとして、シナプスを基盤とした神経回路の障害が疑われているが、シナプスの形成・維持・除去の仕組みは十分に解明されていなかった。

 今回同研究グループでは、マウスを使った実験により、神経細胞が分泌するC1ql1というたんぱく質が、生後発達時の小脳で正しいシナプスを選択的に強化することを発見した。

 実験では、C1ql1欠損マウスを作製し、登上線維シナプスのシナプス刈り込み過程を観察。野生型マウスでは、1本の強い登上線維が強化されるとともに、弱い登上線維の刈り込みが進んだが、C1ql1欠損マウスでは強い登上線維が強化されず、他の弱い登上線維シナプスの刈り込みが障害された。また、登上線維から分泌されたC1ql1は、プルキンエ細胞に存在する「BAI3(バイ3)」という受容体に結合することを発見している。

 他に、BAI3遺伝子が欠損したマウスやC1ql1とBAI3の結合を阻害したマウスでも、登上線維シナプスの刈り込みが障害されている。その結果、C1ql1やBAI3を欠損したマウスでは、小脳神経回路に依存した運動記憶・学習機能が著しく低下することも明らかになった。

 さらに、成熟後にC1ql1やBAI3を除去すると、いったん形成された登上線維シナプスが失われることから、大人になってからも登上線維シナプスを維持するためには、C1ql1-BAI3結合が必要であることが分かった。

 同研究によると、こうしたC1ql1に類似したたんぱく質は、小脳以外のさまざまな脳部位にも存在し、各神経回路で機能すると考えられるという。そのため今回の研究成果は、記憶障害や精神疾患の原因解明と治療法開発に役立つことが期待されるとしている。

photo 神経細胞はシナプスによって結合し、神経回路を形成
photo 小脳プルキンエ細胞に結合する登上線維と登上線維シナプス
photo 登上線維シナプス回路の生後発達変化
photo C1ql1はプルキンエ細胞の膜表面に発現するBAI3と結合する
photo C1ql1-BAI3結合は登上線維シナプス回路を調節し、運動記憶・学習を制御する

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