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» 2015年02月10日 09時00分 公開

日系航空機メーカーは、主戦場のアジアで勝ち残れるか?再生請負人が見る製造業(6)(2/3 ページ)

[上野正雄/アリックスパートナーズ,MONOist]

すそ野が広い航空機産業の構造

 航空機業界のプレーヤーの関係や構造がどのような形で成り立っているのか、自動車業界や電機業界などに比べるとあまり知られていないように思う。そこで業界構造について簡単に見ていこう。

 航空機業界は、グローバルに見れば非常にすそ野が広い。参入領域も民間航空機のみならず、防衛・宇宙産業にまで広がりを持つため、関連産業は非常に広範囲に及ぶ。例えば、米国の航空・宇宙産業は日本の10倍以上の市場規模を持ち、製造関連産業の大きな部分を占めている。

 航空機業界の業界構造を見てみると「OEM(Original Equipment Manufacturer、実際に航空機を作るメーカー)」「サプライヤー」「メンテナンス企業(MRO:Maintenance, Repair and Overhaul、航空機の整備や修理などを専門とする企業)」の3つの分野に分けられる。

 OEMは、機体のメーカーであるエアバスやボーイングなどの他、エンジンのメーカーであるロールスロイス、GE、装備品のメーカーであるハネウェルやロックウェル・コリンズなどが当てはまる。サプライヤーは、これらのOEMに対し、エンジン、装備品、キャビンといった部品や素材などを提供する企業だ。自動車の産業構造と同様にTier1、Tier2企業などでセグメントされる。メンテナンス企業は、機体および各種部品メーカーなどの他、エアラインの整備部門などが担うことが多い。

 これらの構造に対し、日系大手メーカーは、主にボーイング、エアバスに主要部品を供給するTier1サプライヤーの役割を担ってきたといえる。ただ、航空機業界全体を見た場合、最近ではExpliseatや、テスラ・モーターズのCEOであるイーロン・マスク(Elon Musk)氏が設立したSpace Xなど、新規参入するベンチャー企業なども増加しており、固定化した業界構造から変化しつつあるといえる。

日本の航空機業界のポジショニングとその変化

 日本であらためて航空機業界に大きな注目が集まっているのは、これらの業界構造のあらたな変化をとらえて、航空機産業への再参入や再定義の動きが活発化しているからだ。

 まず機体OEMを見てみると、最も大きい動きが三菱航空機のMRJだ。第二次世界大戦後、日本の航空機産業は停滞の歴史を刻んだ。1971年に伝説的だった国産旅客機「YS-11」が生産終了を決定して以来、40年以上にわたり機体のOEMを担う企業は現れなかった。

 しかし、2000年代に入り三菱重工業が中心となり、三菱航空機を設立。日本の技術を中心に世界中の技術を結集し国産旅客機「MRJ」を世に送り出すこととなった。国産旅客機の実現は、40年以上にわたる日本の航空機業界の夢であり、まさに国益につながる取り組みである。

 ただ、競争環境は容易なものではない。「MRJ」が参入するリージョナルジェット(短距離輸送用ターボファンエンジン搭載航空機)分野においては、カナダのボンバルディアとブラジルのエンブラエルなどが先行している。さらには中国の新興勢力であるCOMACの「ARJ21」などとも争い、勝ち抜いていかなければならない。これらの競争に勝ち抜くためには、技術力だけでなくいかに世界中でエアラインやリース会社に拡販し、早期に投資回収していくかという、営業力がカギとなるだろう。

photo JALに導入予定のMRJ ※出典:三菱航空機

エンジンにおけるB787の価値と経産省の取り組み

 エンジン分野については、ボーイング787(B787、ドリームライナー)において、日本企業の技術力が結集したことが話題になった。B787の開発に当たっては、エンジン分野ではIHIや三菱重工業、川崎重工業などの重工各社が参加し、Tier1のリスク&レベニューシェアリングパートナーとして、重要な役割を果たしてきた。

 さらに、経済産業省が産業競争力強化法に基づき、民間航空機エンジン事業の再編(三菱重工、IHI)を支援する動きがある。今後、重工各社が1企業としての立場を越えて、オールジャパンで再編を本格化させることができれば、ロールスロイスやGE、P&Wといった主要メーカーと競い合うこともできるかもしれない。業界内でのポジショニングの変革を仕掛けるのであれば、今が絶好のタイミングといえる(図表3図表4

photophoto 図表3:エアラインとOEM・サプライヤーのプロフィットプールの違い/図表4:機体OEMとエンジンOEM、サプライヤーのプロフィットプールの違い(クリックで拡大)※出典:アリックスパートナーズ

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