SAPはインダストリー4.0でどういう役割を果たすのか製造マネジメント インタビュー(2/2 ページ)

» 2015年03月04日 08時00分 公開
[三島一孝,MONOist]
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SAPはインダストリー4.0で何を担うか

―― SAPはインダストリー4.0でどういう役割を担うと考えますか。

ハーツバーグ氏 インダストリー4.0で理想とされるITシステムを実現するには、次の5つのシナリオを実現しなければならない。1つ目は企業としての基幹システムを現場から最上位のシステムまで垂直統合するということだ。2つ目が製造機械同士をM2Mで結び工場内での水平統合を実現すること。3つ目は、これらの製造系のシステムにeコマースシステムと統合することになる。これにより受発注の情報などがすぐに工場とやりとりできるようになる。

 4つ目がサプライヤーとのシステム統合で、それぞれの可視化や品質管理などのシステムを接続させる。これは企業間の壁を超えた水平統合ということができる。そして、5つ目がマシンクラウドだ。これは機器から直接クラウドにデータを上げて、リアルタイムで分析などを行い、予防保全を図るものとなる。

photo SAPが考える製造業における“接続”のシナリオ(クリックで拡大)※出典:SAP

ハーツバーグ氏 SAPでは、これらのうち、工場内のM2M通信については自社で行っていないが、その他の4つの領域については、既に各種アプリケーションやソリューションを用意している。SAPとしてはこれらの領域を狙っていく。

―― SAPがインダストリー4.0やIoTに取り組む上で課題だと考えていることは何ですか。

ハーツバーグ氏 課題は数多くあると考えているが、1つが莫大に増えるデータ量にどう対処するかということだ。データサイエンティストなどデータを扱うプロフェッショナルの数が不足しているということもあるが、これらを補う機械学習などの機能もまだまだ進展の余地があると考えている。また、セキュリティの問題は今以上に企業全体に関係する大きな問題になっていくだろう。

2025年の企業システムの姿

 SAPでは「パーフェクトエンタープライズ(Perfect Enterprise)」として、将来のICTのシステム構成の予想図を示している。1990年代の企業システムは基本的にバラバラのシステムだったが、2015年現在ではERPを基軸としたパッケージシステムにより、統合管理が行えるようになった。さらに2025年には、IoTの進展により企業内システムにおいても、IoTアプリケーション/データ管理が重要な要素を占めるようになるという。これらは自社内、サプライヤーなどの他社、顧客が、一貫したシステムによって連携できるようになり、無駄なくハイクオリティなモノづくりが行えるようになる。

photophotophoto SAPが示す2025年の企業内システムの姿。(左)が1990年、(中央)が2015年、(右)が2025年の姿だという(クリックで拡大)※出典:SAP

 この姿が実現していく中で、現在IoTと考えられているもの、インダストリー4.0として示されているものも、企業システムの中に組み込まれてくるというのがSAPの考えだ。既にSAPではこれらの動きの基盤になり得るアプリケーションやシステム群を用意しており「多くの企業の成長を後押ししていきたい」(ハーツバーグ氏)としている。

photophoto 2025年の企業システムにおけるIoTとインダストリー4.0の位置付け(左)とSAPが既に保有しているアプリケーションやソリューション(右)(クリックで拡大)※出典:SAP


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