グローバル企業に求められるKPI管理とは?中堅製造業のためのグローバルERP入門(7)(2/3 ページ)

» 2015年03月10日 09時00分 公開
[蒲山雅文/スカイライト コンサルティング シニアマネジャー,MONOist]

企業にとっての“健康診断”

 われわれが年に一度健康診断を受けると、素人目には何を表している数値なのか判断がつかないような検査結果が出ます。このうち、正常値に収まっているものについては気にする必要はありません。しかし、「経過観察が必要」と判定された指標については、医師のアドバイスにもとづいて何らかの対処を行う必要があります。そして、次の健康診断でその成果を確認することで、健康な体に戻ったかどうかの判断をするというのが一般的なアプローチです。

 ただ、健康診断以外のタイミングでも自分たちで体の状態を測ることが可能な指標はいくつもあります。体重や体脂肪率、血圧などがその代表例です。体形の維持に気を配る人は体重や体脂肪率の増減に敏感なことでしょう。芸能人がテレビ番組で人間ドックの検査結果を見て、驚がくしている姿を見れば、自分でも生活習慣病の可能性を疑って血圧を測ってみたくなる人は多いでしょう。

 このようにわれわれは、膨大な指標の中から自分の体を維持・管理するために「自分にとって重要な指標」に着目して、その推移を把握し、改善に向けて努力するということを日常生活の中で実践しているわけです。

 同じことが、企業における経営管理にも当てはまります。膨大なデータと正面から向き合い、大量のリポートを作り上げて経営に報告することも時には必要かもしれません。しかし、経営管理とはその名の通り経営を管理することです。経営状態を「把握」するだけでなく適切に「管理」するには、高度な意思決定が必要になります。そして高度な意思決定を下すには、それを判断するに足るタイムリーかつ高精度な情報が必要不可欠となります。

 現場の裁量でやみくもに作られたリポートでは必ずしもそのインプットとして必要な要件を満たせない可能性があるどころか、不要な情報による混乱を招いてしまうかもしれません。そのような事態を避けるべく、経営者が自社の状況を適切に把握し意思決定をするための判断材料として重点的に管理しようと設定する指標がKPIと呼ばれるものです。

 KPI管理が徹底されている企業の多くは、自社のビジネスの特徴や過去の業績推移との関連性などを踏まえて各部門にKPIを設定し、また年度の初めなどにその目標値を定めます(Plan)。その後、1年もしくは1カ月といった期間を通じてその達成状況(Do)を定期的にモニタリングし、問題がないかどうかタイムリーに把握(Check)、改善活動を検討・実行し(Action)、その結果をまたモニタリングするというPDCAサイクルを回しています。

 本当の意味で「経営状態を可視化する」というのは、咀嚼(そしゃく)し切れないほど膨大な情報を経営陣のもとに集めるのではなく、このKPIを軸としたPDCAサイクルが回っている状態を作り、経営状況を判断するのに必要十分な情報がタイムリーに取り出せ、経営判断に生かすことが可能になっている状態を実現させることです。

 では企業がKPIを定義し管理していくに当たって、ERPがどのような役割を果たすのかを見ていきましょう。いわゆる「スクラッチ開発」によって個別最適化された従来の業務システムとどのように違うのでしょうか。

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