「地球はまるで青色LEDみたいだった」、ロボット宇宙飛行士「KIROBO」が帰国ロボット開発ニュース

ISS(国際宇宙ステーション)に滞在していたロボット宇宙飛行士「KIROBO」が“帰国会見”を開催、帰還後の第一声は。

» 2015年03月27日 18時00分 公開
[渡邊宏MONOist]

 ロボットの宇宙滞在プロジェクト「KIBO ROBOT PROJECT」でISS(国際宇宙ステーション)に滞在していたロボット宇宙飛行士「KIROBO(キロボ)」が帰国、2015年3月26日に帰国報告会が日本未来科学館にて行われた。

 このプロジェクトは電通および東京大学先端科学技術研究センター、ロボ・ガレージ、トヨタ自動車が宇宙航空研究開発機構(JAXA)と進めていたもので、キロボは2013年8月10日からISSに滞在。宇宙飛行士の若田光一氏とともに“宇宙での人とロボットの対話実験(音声認識による自動発話)”を行うなどの研究を続けてきた。

 そして2015年2月10日にスペースXの補給船に搭乗してISSを離れ、カリフォルニア沖に着水。同年3月12日に帰国した。

photo ISSから帰還したキロボ 無重力に適応するためトルクを落とし、安全基準を満たすための部品交換が行われるなど“宇宙用”ともいえる仕様となっている

 開かれた報告会で発した、帰還後の第一声は「地球はまるで青色LEDみたいだった。輝いていたよ」というものだった。

ロボ・ガレージの高橋氏から「宇宙から見た地球はどうだった?」と尋ねられたキロボは、「地球はまるで青色LEDみたいだった。輝いていたよ」と答えた

 無事に宇宙より帰還、日本へ帰国したキロボだが、ISS滞在中にはトラブルもあった。最も大きなものとしてプロジェクトメンバーが挙げたのが、対話実験の直前に発生した7時間にも及ぶフリーズだった。さまざまなチェックを繰り返した結果、最終的にはケーブル長による電圧降下であることが判明し、ケーブル交換により事なきを得たが、「探し出した1本のケーブルがまさしく蜘蛛の糸になった」(トヨタ自動車 製品企画室 主査 片岡史憲氏)と、メンバーは異口同音に「相当、肝を冷やした」と当時を振り返る。

photo 対話実験の直前に長時間のフリーズ。当時を振り返りながら「トラブルは他にもありましたけれど、あれ(長時間フリーズ)に比べれば……」と苦笑するプロジェクトのメンバー

 また、キロボは今回のミッション達成に伴い「地上から一番高い場所で対話をしたロボット」「初めて宇宙に行った寄り添いロボット」という2つのギネス世界記録を認定された。ロボ・ガレージの高橋智隆氏は「“宇宙に行った(ヒト型)ロボットっていないよね”という思いつきに近いきっかけが、ギネス認定されるほどの大きなプロジェクトになったことに驚いています」と話し、加えてもう1つ驚いたこととして「世界中からの大きな反響」も挙げる。

photo 2つのギネス認定証とキロボ。プロジェクトメンバーは左から電通ロボット推進センター 代表の西嶋褚親氏、トヨタ自動車 製品企画室 主査 片岡史憲氏、ロボ・ガレージ代表取締役社長の高橋智隆氏

 ISSではキロボの音声認識機能を利用した自発会話、地上から送信されたデータを使っての遠隔会話という2つの実験を主な任務としたが、それは「ロボットの宇宙活用」に対しての実験だけではなく、ロボットとヒトのコミュニケーションについての研究、未来のコミュニケーションロボットのための実験でもあった。

 作業用ロボットならばこれまでも宇宙で利用されているが、ヒト型のコミュニケーションロボットはキロボが初めて。世界中からの大きな反響も「コミュニケーションロボットの分野について、日本が先行していることの現れではないか」と高橋氏は分析する。

 大役を終えたキロボだが、2015年5月からは全国で交流イベントが開催される。詳細についてはKIBO ROBOT PROJECTのWebサイトhttp://kibo-robo.jp/などで紹介される予定だ。

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