モノとコストを同時に削ろう! 研磨作業から見直す経営改善 “研援隊“がサポートします(1/3 ページ)

スリーエム ジャパンの研磨材製品事業部は、日本全国の製造現場で行われている“研磨作業”に着目し、その効率化を図ることで中小製造業の経営改善を支援しようというユニークな取り組みを行っている。同社が2015年3月に九州で開催した、事業説明会と現場見学会の様子を取材した。

» 2015年04月08日 10時00分 公開
[陰山遼将MONOist]

 さまざまなモノづくりにおいて欠かせない工程である研磨作業。スリーエム ジャパン(3M)の研磨材製品事業部は、日本全国の製造現場で行われているこうした“研磨作業”にフォーカスし、その効率化を図ることで中小製造業の経営改善を支援しようというユニークな取り組みを行っている。同社は2015年3月25日に福岡県博多市で、こうした研磨材製品事業部の取り組みと、九州地区における事業戦略について説明を行った。

研磨作業に新たなイノベーションを

 3Mの研磨材製品の歴史は1920年代にまでさかのぼることができるという。同社 研磨材製品事業部 マーケティング部 部長の山根宏太氏は「3Mの研磨材製品の起源ともいえるのが、1921年に開発された世界初の耐水研磨材『ウェットオアドライ』。“水と一緒に使える紙やすり”というアイデアを実現させたことで、それまで粉じんが舞う中で行われていた製造現場の作業環境の姿を一変させた3Mの最初のイノベーション製品」とその起源について説明する。

スリーエム ジャパン 研磨材製品事業部 マーケティング部 部長の山根宏太氏(左)と1921年に発表された耐水研磨材『ウェットオアドライ』(右)(クリックで拡大)出典:スリーエム ジャパン

 その後も3Mは長年にわたり、不織布の活用や高精細かつ微細な表面加工を施したものなど、新技術の開発とともに新たな研磨材製品を生み出してきた。2015年3月現在、約125種類の研磨材製品を展開しており、板金・プレス加工、溶接、切削、車体の塗装など幅広い分野で利用されているという。こうした3Mの長年にわたる製品開発ロードマップの中で、同社が研磨作業に新たなイノベーションをもたらす製品と主張するのが、2011年から販売を開始している研磨材製品「キュービトロンII シリーズ」だ。

研磨材製品「キュービトロンII シリーズ」(クリックで拡大)出典:スリーエム ジャパン

 キュービトロンII シリーズは、従来の一般的の研磨材製品と比較して、高い研磨性能を維持できるという特徴がある。その性能を支えているのが、米国の3Mが独自開発した精密成型セラミック砥粒(PSG:Precision Shaped Grain)だ。

 一般的に研磨砥粒は使用していくうちに、角が取れ丸みを帯びながら消耗していく。一方、3Mが開発したPSGは、特殊なセラミックスを原材料とするナノレベルの微細砥粒を結晶化させ、1つ1つの砥粒が鋭い三角形状になるよう成型している。この結晶構造が、常にシャープなエッジを保ちながら消耗していくため、研磨力を最後まで維持することができるという。

PSGと一般的な研磨砥粒の比較図(左)。PSGはシャープなエッジを保ちながら消耗していくため、研磨力を維持しやすいという(右)(クリックで拡大)出典:スリーエム ジャパン

 3MはこのPSGを用いた研磨材をキュービトロンII シリーズとして2012年2月から展開しており、現在では研磨ベルト、研磨ディスク、オフセット砥石など複数のタイプの製品を用意している。

 では実際にキュービトロンII シリーズを利用した場合、どの程度研磨作業を効率化できるのか。3Mによれば、キュービトロンII オフセット砥石と一般的なオフセット砥石を比較した場合、研磨力が約1.6〜2倍、製品寿命が約4.9〜7.2倍で、さらに研磨した際に焼き跡がつきにくいといったメリットがあるという。ただしその分、価格については「一般的な製品と比較して3〜5倍になる」(3M)としている。

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