モデルベース開発って、どう教えればいいの?モデルベース開発奮戦ちう(11)(1/3 ページ)

全社のモデルベース開発におけるライセンス管理やデータマネジメント、そして教育を目的とした基盤強化チームに選ばれた京子。まずは、最大の課題と感じていた、モデルベース開発を知ってもらうための教育カリキュラム作りに取り組むことになった。

» 2015年04月09日 10時00分 公開

前回のあらすじ

モデルベース開発奮戦ちう

 ついにモデルベース開発を適用した「CVT∞」を完成させた京子たち三立精機の制御設計チーム。成果報告のための会議で説明担当になった京子だったが、そこでこれまでとは異なる種類の課題にぶつかることになった(前回の記事へ)。


「モデルベース開発奮戦ちう」の主な登場人物 「モデルベース開発奮戦ちう」の主な登場人物(クリックで拡大)

教育カリキュラムの準備ちう

 幾つもの会議を経て、全社におけるモデルベース開発の教育カリキュラムと、その実施計画が作成されていった。まずはツールの使い方のセミナーを実施する方向で、初回の内容策定が大詰めを迎えている。

 基盤強化チームで討議する中で、モデルベース開発手法について、開発プロセスに沿って実施/体験してもらうことが最優先課題であると、チームメンバーの誰もが感じていた。そして会議室では、その最優先課題について、具体的にどの様な教育カリキュラムとして進化させるかの議論が白熱しているところだった。

大島

昨日の会議で出た、最終的にはモデルベース開発手法を開発プロセスに沿って実施して、モデルベース開発の素晴らしさを皆に体験してもらいたいという案について、引き続き議論を行いたいと思います。当社には、いろいろな部署、いろいろな立場の人がいるわけです。昨日も課題として挙がりましたが、それぞれの部署や立場によって、本当に求めているモデルベース開発の恩恵はそれぞれ異なるはずです。この件についてはいかがでしょうか?


京子

確かにそうですね。開発の初期段階となる上流で設計をする人と、開発の中盤以降で詳細な設計をする人では、欲しい情報や解析結果が違うのは確かです。あと各技術者が元々持っているスキルの違いとかもあると思いますし。


大島

その通り。開発段階に応じた適正なモデルの機能や詳細度をある程度整理することはできたとしても、教育を行う上で、技術者のスキルのバラつきは影響が大きそうだ。


山田課長

モデルベース開発の教育を進めていく上で、技術者のスキルを定量化することが最優先になる、ということかしら。ではまず、「技術者のスキルの定量化」について広く調べてみたらどう?


 山田課長の言葉を受けて、早速京子たちは世にあるITスキル標準※1)について調査を始めた。まずWebサイトなどでの調査によると、IPA(情報処理推進機構)が定めたものが一般的なようだ。その中でも、組み込みソフトウェアを開発する技術者に特化した、ETSS(組込みスキル標準)に目を引かれた。

※1)各種IT関連サービスの提供に必要とされる能力を明確化・体系化した指標のこと。

京子

このETSSなら、組み込みソフトウェアを開発する技術者に特化したスキル指標だから、そのまま利用出来そうですね。


大島

俺もそう思ったんだが、よく見てみると参照しているプロセスが何か少し違う気がしてね。


京子

違うって、どんなところがですか?


大島

全般的には当てはまると思う。でもこの前の「CVT∞」のモデルベース開発を思い起こしてみると、組み込みソフトウェアの開発プロセスと、モデルベース開発のプロセスは少し違うよね。それとスキル指標の項目にモデルベース開発の項目も無いしね。


京子

そういえばそうですね。スキル指標の項目に、モデルベース開発が無ければ意味がないですね。私もそう思って、いろいろと調べてみたのですが、JMAABでモデルベース開発に携わる技術者のスキル/キャリアの定量化に特化したETSS-JMAABというものを出しているようですよ。


 JMAABでは、ETSSに準拠した、モデルベース開発に携わる技術者のスキル/キャリアを定量化する基準を策定するワーキングループが活動中だった。この基準は、スキルフレームワーク/キャリアフレームワークによって構成されている。

 三立精機でモデルベース開発に携わる技術者のスキル/キャリアを定量化する手段として、このETSS-JMAAB※2)を基準として採用することになった。基盤強化チームで、このETSS-JMAABを基に自社におけるスキル評定のベースラインを策定。そして、ある部署を対象にスキル評定を実施した。

※2)IPA策定のETSSを参考にモデルベース開発スキル基準として、JMAAB-MBDエンジニア育成ワーキングループで策定されたもの。初版の発行後も、モデルベース開発関連の変化スピードに対応すべく現在も活動は継続中。

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