「アイデアの交差点」24時間ハッカソン開催Open Hack Day Japan 3リポート(3/5 ページ)

» 2015年04月17日 09時00分 公開
[加藤まどみMONOist]

スタイラスペンが、アレを“かく”ものに!

 ワコム提供のスタイラスペン「Bamboo Stylus fineline」をハックしてスマート耳かきデバイス「Mimikaki Stylus」を作ってしまったのが「YAY」だ。これは「耳かき圧を測定して、快適に耳かきを楽しめる」デバイスだという。

 ペン先の部分に耳かきの形状が取り付けられており、ボタンで「耳かき圧モード」と「耳アカ検知モード」を切り替える。スタイラスペンは筆圧を1024段階で感知できる。耳かき圧モードでは、耳かきの力を可視化することで、耳を傷つけることなく適度な力で耳かきが行える。

 耳アカ検知モードでは、耳かきで耳の中をなぞり、耳アカがあればレーダーが反応して知らせる。「今まで見つけられなかった耳アカを発見できる」とのこと。

 「もともとはiPad用だが、Androidで実装、また書くこと以外に果敢に挑戦してくれた」(ワコム)ことから「Bamboo Stylus fineline賞」を受賞した。「耳かきもある意味『かいて』いるが。展示会でもこんな発想はなかったと言われた」(YAY)。村上氏は「ハックの王道。センサーの精度を見極めてきっちり作り込んだのがよかった」とコメントした。

Mimikaki Stylus

吉田くん、今度はポストに

 自宅のポストにいらないダイレクトメールばかり入っていてうんざりした経験はないだろうか。「しそQ」の「吉田“ポスト”カツヲ」は、そういった郵便物が来ると「吐き出す」ポストだ。ポストという「長年機能の変わっていないもの」にスキャナを組み込むことで、新しい機能を加えた。

 ポストに郵便物が入ると、PFU提供の小型スキャナ「ScanSnap」が読み取り、その画像をサーバに保存して、受け取った人にメールで通知される。そのメールにあるアドレスにアクセスして画像を確認してから、「いるか・いらないか」を判断する。「いらない」と判断すると、ポストの口から吐き出されるという仕組みだ。

 同チームでは「Node.js」(JavaScriptの一種)に初めて挑戦したり、郵便物を分配するための駆動部分の組み立てと作り終わった後の制御などが大変だったそうだ。こちらは「ScanSnap賞」を受賞した。

吉田くんはこのチームでは赤いポストに変身。

露光代理店が邪魔者を消します

 見事最優秀賞を勝ち取ったのが、「立体逓信団」のアプリ「露光代理店」だ。観光地などの人の多い場所で写真を撮ろうとすると、どうしても他の人が映り込んでしまう。そこで、目的の人だけ残して他の人は消してしまうというアプリだ。ARでは通常、現実空間に仮想空間を足していくが、この技術は現実から物体を差し引いていく「Diminished Reality」(減損現実:diminishは減少の意)技術の一種になる。オリンパスイメージング提供の「新しい映像体験で賞」と、当日の観覧者と生中継の視聴者からの一般投票による最優秀賞に選ばれた。

 使い方は簡単で、10秒ほどカメラの前に止まっていると20枚程度の写真を撮ってから、動いているものを自動で除去し、目的の被写体や風景のみの写真を作ってくれる。人混みを映さない方法には、減光フィルターを使って長時間露光することにより、止まっているものだけを映す方法があるが、この方法ではどうしても動いているものの像がうっすらと残り、完全には除去できない。露光代理店では動いているものを識別した上で動いてない時の画像を採用するため、根本的に動いているものを消すことができる。開発メンバーの1人は「大学で画像処理を研究しているが、普段の研究環境とは違いたくさんの人に感心してもらえてうれしかった」とのことだ。24時間でプロトタイプまで持って行かなければならないため、サンプルの撮影や実験、制作を同時にこなさなければならないのが苦労した点だという。

比較写真:横断歩道で動いている人だけが消されている。

 村上氏は「しっかりした技術を基に直感的で分かりやすい作品に仕上がっていた。仕様も公開して使わせてほしい」とコメントした。最優秀賞賞品はデジタルガジェットの詰め合わせ10万円相当だった。「IoTが来ているが自分の知る限りキラーアプリがない。ブルーオーシャン(未開拓の領域)状態なので今世界一になるチャンスがある。ぜひハッカーの皆さんに挑んでほしい」(村上氏)とのことだ。

一般投票による最優秀賞は「立体逓信団」に!

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