アップルやグーグルは本当にクルマを作るのか「iCar」が現実に?(3/4 ページ)

» 2015年04月21日 11時00分 公開

グーグルにとってクルマは情報を集めるための「端末」

 先述の通り、グーグルは自動運転車と車載システム向けOSの二方向から自動車市場に参入している。さらに、2014年12月にはロイターが、グーグルが組み込み型車載OSを開発中と報じており、ブラックベリーやマイクロソフト、Linuxと競合する動きが見られるなど参入方法は多岐にわたる。

 その理由は、グーグルが掲げる自社のミッション「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」にある。Androidやメール/カレンダーなどのサービスを無償提供するのは、個人の行動や趣味思考、交友関係などの情報を収集するためだ。スマートフォン/タブレット端末の「NEXUSシリーズ」や、映像配信用ドングル端末「Chromecast」を展開するのは、情報収集の間口を広げるためである。

グーグルは情報収集の間口を広げるためさまざまな「端末」を投入している グーグルは情報収集の間口を広げるためさまざまな「端末」を投入している

 その目的はグーグルのコアビジネスである「検索連動型広告」の精度を上げることにある。グーグルは「Androidやスマートフォンは消費者のすぐ身近にある端末」と位置付けており、「直接データを取り込み活用できるもの」としている。2013年12月〜2014年1月にかけてロボット関連企業を7社買収しているが、これもロボットを「端末」ととらえているからだ。

 そこにセンサーの固まりともいえるクルマが新たな「端末」として加わることで、従来の個人情報に加えて、社会インフラや環境に関する情報も収集できるようになる。Googleは、情報さえとれれば、参入方法は問題ではないのである。

アップルは自動車業界に参入するのか

 では、アップルはどうか。2020年にEVを市場投入するといううわさや、自動車関連技術者を数百人集めているなどの報道が続く中、アップルは本当にクルマを製造販売するのだろうか。

 アップルの2015年3月時点における時価総額は約7250億米ドルで、これは自動車業界トップのトヨタ自動車(2200億米ドル)の3倍以上に相当する。

 またアップルのコアビジネスは「端末」の製造販売だ。この資金力とビジネスドメインをもってすれば、先述の臆測や期待も自然の流れといえるだろう。一時はテスラ買収のうわさも流れたが、このように自動車メーカーの買収を通じた製造販売や、提携による受注生産もあり得るかもしれない。

 アップルCEOのTim Cook(ティム・クック)氏が、ドイツの日刊紙による「クルマを製造するのか?」という問いに対して、「セールスは二の次。マーケットシェアも二の次。利益も二の次。最も重要なのは最高のプロダクトを製造することに注力することだ。」と答えているが、これも自動車業界参入をにおわしていると取れなくもない。アップルのEV参入報道に対し、ルノー・日産アライアンスCEOのCarlos Ghosn(カルロス・ゴーン)氏も歓迎するコメントを出している。

ルノー・日産アライアンスのカルロス・ゴーン氏はアップルのEV参入を歓迎している ルノー・日産アライアンスのカルロス・ゴーン氏はアップルのEV参入を歓迎している

グーグルは情報収集の間口を広げるためさまざまな「端末」を投入している,グーグルは情報収集の間口を広げるためさまざまな「端末」を投入している(クリックで拡大)

 しかし実際問題として、寿命数年、価格も数万円〜十数万円のiPhoneやPCを作るのと、寿命10年以上、価格が数百万円するEVを作るのとでは意味合いが全く異なる。クルマの製造販売への本格参入を完全否定するわけではないが、やはり考えにくい。

 では、どこに焦点を当てているのか。それは、車内での「ユーザー体験」ではないだろうか。CarPlayは、iPhoneとのシームレスな連携にとどまっており、クルマの根幹ともいえる制御情報(CANバス情報)にはアクセスできない。もし、位置情報や車載カメラの映像といった外界情報に加え、クルマ自体が収集する速度情報やエンジン回転数、ブレーキペダルのストローク量やステアリング舵角、燃料噴射量といったCANバス情報を活用できれば、クルマに特化した新たなユーザー体験を創造できる可能性がある。

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