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» 2015年04月22日 10時00分 公開

今井優杏のエコカー☆進化論(17):ホンダが3モーターハイブリッドの「レジェンド」で目指した“走りへの夢” (2/4)

[今井優杏,MONOist]

ハイブリッド車なのに燃費性能はビミョーな「レジェンド」

 こうして役者がそろったホンダのハイブリッドシステムですが、じゃあ3つもモーター積んじゃってさぞかし燃費がいいんでしょうというと、そうじゃありません。レジェンドはJC08モード燃費が16.8km/lと、ハイブリッドという語感から察するに思わず首をかしげてしまう数字にとどまっています。

 実は燃費だけで言えば、2モーター式のハイブリッドを搭載した、その名も「アコード ハイブリッド」のほうが上の30km/l。さらに言うなら1モーター式のフィットは2WDモデルで36.4km/l、4WDモデルでも29.0km/lと、モーターの数が少なくなるにつれてむしろ燃費のいい数値が。

 それはどうしてなんでしょうか。

1モーターの「i-DCD」

 フィットの「2WDモデルで36.4km/l、4WDモデルでも29.0km/l」という数字には、おそらくそんなにクルマに明るくない人にでも答えはすぐに見つかると思います。

 そう、フィット自体が軽くて小さいからです。軽くて小さいものを動かすのに、多大なパワーは必要とされませんよね。

 その小さくて軽い車体を生かすために、コンパクトな1モーター式のハイブリッド「SPORT HYBRID i-DCD(以下、i-DCD)」が搭載されています。高効率なモーターに組み合わされるのは7速DCT。モーターの中空部に1速を遊星ギヤ化して格納してしまい、“モーター内蔵型7速DCT”としてDCTとモーターを一体化させたことや、エンジンとモーターを切り離すためのクラッチをDCTに兼務させるなどの工夫から驚くほどの小型化に成功したものです。そしてエンジンとモーターを切り離すことでエネルギーのロスをも同時に抑え、ふんわり踏めば時速75kmくらいまではモーター走行が可能となっています(詳しくは私の過去記事をどうぞ!)。

「i-DCD」の高出力モーター内蔵7速DCTの構造ギヤ配列概念図 「i-DCD」の高出力モーター内蔵7速DCTの構造(左)とギヤ配列概念図(クリックで拡大) 出典:ホンダ

 いくらフィットが売れるからって、フィットのためだけにこんな凝ったシステムを開発するなんてリッチだなぁホンダ! と思っていたら、その後このi-DCDを搭載したモデルが、気付けば雨後のタケノコのごとくボコボコ出てきて、今やホンダの屋台骨支えるまでにラインアップを拡大していますね。3列シート車の「ジェイド」、5ナンバーセダン「グレイス」、東南アジアでも売れまくる小型SUV「ヴェゼル」。それぞれフィットよりも車格が大きいですが、いやはやなんのその、スーっと滑りだすモーターの加速はそれぞれ健在で、信号待ちからのスタートダッシュなんかにものすごく恩恵を感じます。

 しかし燃費はヴェゼルで26km/l(2WD)と、やっぱり車体が大きくなればテキメンに燃費は劣ります。

2モーターの「i-MMD」

「i-MMD」の基本構造 「i-MMD」の基本構造(クリックで拡大) 出典:ホンダ

 そのある程度の重量(ボディサイズ)を引っ張るのが2モーター式。ホンダでいうところの「SPORT HYBRID i-MMD(以下、i-MMD)」。搭載するのは「インスパイア」が生産中止になってからレジェンドが発表されるまでのあいだ、同社フラッグシップの座を守ったアコードです。現在は「アコード ハイブリッド」という名になり、ハイブリッド専用モデルに変わっています。

 これこそ、われわれが思うハイブリッドの正しい形……と言ってもいいんじゃないでしょうか。とにかく燃費に貢献し、高効率化を目指したエンジンです。とはいえ、モーターで発進し、エンジンで走行する「プリウス」とは全く考え方の異なるシステム。i-MMDは「シリーズ型ハイブリッド」といわれるシステムで、エンジンを主に発電のみに使用し、モーターを走行に使うというものなのです。そう、三菱自動車の「アウトランダーPHEV」の考え方に近いですね。高速クルーズに入ったときのみクラッチが直結してエンジン走行を行うけれど、一般道の走行域のほとんどをシリーズ型で行っていますから、30km/lという、車格からは驚くような燃費がたたき出されたというわけなんです。

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