デジタルツインを実現するCAEの真価

計算機はクラウドの時代へ、セキュリティの進化が後押しベンダーに聞くCAE最新動向(2)(2/3 ページ)

» 2015年05月07日 11時00分 公開
[加藤まどみMONOist]

社内での反対がある。セキュリティと仕事がなくなるという視点から

 一方情報管理の点でも課題がある。社外サーバを利用するのでセキュリティの点から社内ストップがかかることが往々にしてあるという。また情報管理部門から見ると、今までログなどを社内で全て管理できていたのが、全くできなくなる。利用料金についても時間やタイミングによって変動するため、事前に試算することが難しい。運用効率が上がる可能性があるにもかかわらず設備計画が見えなくなるため、管理部門としては反対する立場になるという。

 また、「クラウドに移行すれば情報管理部門の仕事が減るのでは……」という心配による抵抗もあるという。「仕事はなくなるのではなく、仕事の内容が変わるのです。このあたりが日本では全く整理、理解されていない」と藤川氏は言う。すなわち社内サーバだけを管理することから、マルチサーバのハイブリッド環境の運用へと移行するということだ。この辺りを整理しないと恐怖だけになってしまうという。アメリカでは既に抵抗や混乱の段階が過ぎ、ハイブリッド環境が進められつつあるという。

セキュリティ面の整備が採用を後押し

 欧米でももちろん初めから簡単にクラウドを利用できたわけではない。特にセキュリティの面から反対は多かったという。クラウドへの移行は、とくにコストダウンへの圧力から欧州が先行し、アメリカがそれに続いたという。またNASAでは5年ほど前までは全く外部コンピュータの利用は不可能だったが、セキュリティ面の向上やコストダウンの圧力から、まずストレージの方で使い始めたという。セキュリティについては現在はIBMなどが第三者認証を整えている。7、8年前はそういったものは全くないに等しかったという。企業ではこれから開発というものはやはり社内で解析することが多いが、一部の大規模計算ではスパコンの利用は進みつつあるようだ。

 外部コンピュータの利用については、どれか1つに限定するのではなく、状況に応じた使い分けが定着しつつあるという。セキュリティ、コア数確保の容易さ、演算方式など、そのときの状況や解析内容に応じて選択する。藤川氏は、安さやすぐにたくさんコア数が確保できるなどその時々の理由で選びがちだが、長期的な視点で見ればセキュリティ面の充実が重要になってくるだろうという。

課題を解決するサービスを展開

 ヴァイナスでは、こういった課題の解決に対する需要が高まるとみて、クラウドをシームレスに切り替えて操作できる「CCNV」というソフトウェアを開発し、昨年から提供を開始している。またそれぞれのクラウドに独自開発コードやオープンソースコードのポーティング、コンパイル、維持管理などを行う「VECAMS」というサービスも提供している。これらによりあらたな外部コンピュータやコードを利用する際の準備作業やそれに掛かる時間を大きく削減できる。

 またセキュリティやデータ転送スピードへの要求に応えるため「V-HPC Network」という専用回線網も提供している。「これを利用すればセキュリティ面についてはほぼ完璧だろう」と藤川氏は言う。

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