インダストリー4.0は人間の仕事を奪うのかハノーバーメッセ2015 リポート(中編)(1/4 ページ)

ハノーバーメッセ2015のメインテーマとなった「インダストリー4.0」。本連載では、現地での取材を通じて、インダストリー4.0に関する各社の動きを3回にわたってお伝えしている。中編の今回は「ロボットと人間との協調」への取り組みの紹介と、人間の果たすべき役割の変化について考察する。

» 2015年05月07日 08時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 ドイツのハノーバーで2015年4月13〜17日に開催された生産技術の展示会「ハノーバーメッセ2015」では、主要テーマの1つとして「インダストリー4.0」が掲げられ、出展企業の多くから、さまざまな切り口での提案が行われた。

 本リポートの前編「インダストリー4.0が目指す“一段上”の自動化」では、同プロジェクトの目標である「マスカスタマイゼーション」に向けた「今までできなかった領域での自動化」についての動きを紹介した。機械により従来以上の範囲の作業を自動化および自律化できれば今まで人の手を介していたものが必要なくなる。これが効率化を実現するわけだが、この取り組みの終着点は「人の手の限りない排除」に行きつくといえる。

 しかし、ハノーバーメッセで興味深かったのは、この「人の排除」とは全く正反対の動きを示す出展が多く行われたことだ。中編では、「人と製造機械の協調生産」に向けた各社の出展とその背景について、紹介する。

≫前編「インダストリー4.0が目指す“一段上”の自動化」はこちら

インダストリー4.0は人から仕事を奪うのか

 「インダストリー4.0は人から仕事を奪うひどい取り組みだ」。ドイツでも実際にそういう声は数多く存在している。実際に筆者も何人かのドイツ人に「反対」の意見を聞いた。インダストリー4.0は第4次産業革命を意味しているが、これが「産業革命」というほどの大きな動きにつながるのであれば、産業構造や労働環境そのものに大きな影響を及ぼすことになり、必然的に大きな反発を巻き起こす。第1次産業革命時には、人間から仕事を奪う機械に対する反感からラッダイト運動(機械打ちこわし運動)なども起こったが、同様の動きにもつながる可能性もないとはいえない。

 EhterCATなど産業用オートメーションの専門企業であるドイツのBeckhoff Automationの創業者で社長のハンス・ベッコフ(Hans Beckhoff)氏は「専門家ではないので」と前置きした上で以下のように語っている。

 「今後さらなるオートメーション化が進めば、そこで働く人々の労働の価値も変化する。従来『生産』とされていた作業の多くの領域において自動化が可能となれば、それらの工程で人間が行ってきた作業については付加価値は下がるだろう。一方で生産現場などでも従来以上に専門教育を受けた高度な能力を持つ人材が必要になる」。

photo ベッコフオートメーションの自動化ライン。RFID技術と、同社のEtherCATと搬送技術XTSを組み合わせることでシンプルながら高度な動きを実現する実演デモを行った。ハンス・ベッコフ氏は「従来型の『生産』の付加価値は下がるだろう」と述べている(クリックで拡大)

 現在の人の働き方を変化させ、ある面では仕事を奪う可能性もあるインダストリー4.0への動きだが、ドイツ連邦政府の狙いは「人が不要となる完全自動化」ではないことを明言している(関連記事:SAPはインダストリー4.0でどういう役割を果たすのか)。

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