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» 2015年05月14日 09時00分 公開

「ロボット新戦略」が生産現場にもたらす革新とは?産業用ロボット(3/4 ページ)

[小平紀生/日本ロボット工業会システムエンジニアリング部会長,MONOist]

“ロボット革命”で日本が新興国に勝つためには?

 さて、ロボット革命では“良い”ロボットが開発できればよいのでしょうか。もちろん「良い」の中身が問題であることは間違いないのですが、例えばロボット単体の「性能」「機能」「コスト」など製品としての性質を考えてみます。もしこれらが優れていれば、日本の製造業の国際競争力につながるでしょうか。もしも、同じロボットを導入して同じような自動化を新興国で実現されたとしたら、コスト面で日本は確実に負けます。しかし、例えば中国の自動化能力はどうでしょうか。今、日本と同水準の自動化ができているのでしょうか。

 中国では1990年代の改革開放政策によって市場経済が本格スタートしました。当時は「中国の人海戦術対日本の自動化」という構図でしたが、2000年代に入り「中国の自動化ライン生産対日本の自動化セル生産」という構図へと変化していきました。しかし、今や中国でも自動化セル生産が主流となっており生産ラインで使われているロボットや設備だけで見ると日本と中国の差はなくなっています。

 日本製ロボットの最大顧客となった中国では、日本製ロボットをうまく活用して日本の製造現場と同じような自動化を果たし、追い付いてくる勢いを見せています。このように、日本の製造現場で利用されているものと同等の性能を持つロボットが、海外の現場でも導入されつつあります。そのため、日本の製造業が国際競争力を獲得して海外との差別化を図るには、良い道具としての性能の「良い」ロボットをただ導入するだけでは不十分です。

 これが「ロボット新戦略」のモノづくり分野で「システムインテグレーター」がクローズアップされている背景です。システムインテグレーターの役割は、エンドユーザーの期待を実現するのにベストフィットな生産システムを構築することです(図4)。最終的なモノづくりの優劣はシステムインテグレーターの成果物である生産システムで決まるといえます。

photo 図4:システムインテグレーターの役割(クリックで拡大)

システムインテグレーターとロボット新戦略

 「ロボット新戦略」では、2020年の製造業用ロボットの市場規模目標を1.2兆円としています。この数字はそれほど大きな規模ではないのですが、ロボットを適用した生産システムは、ロボットと治具の簡単な組み合わせでロボット単価の2倍程度の金額規模のものから、ロボットにさまざまな機器を組み合わせてロボット単価の20倍に達する高額のものまでさまざまです。システムインテグレーターは、1.2兆円のロボットに関連し、付帯的なサービスや間接的に関連する工場設備などを含めた、およそ10兆円規模の生産財産業に関係しています。ロボット産業の活性化と、製造業の競争力強化の両面で、システムインテグレーターが力を発揮し、十分に利益も得て活力を維持することは重要になってきます。

 システムインテグレーターは、さまざまな事業分野や事業形態、企業規模で存在しており、特定の業界を構成しているわけではありません。例えば、自動車産業ではエンドユーザーである自動車メーカーで、自動化構想設計や要素機器の評価が行われています。ただ、実際のシステムづくりは設備メーカーに任されることも多く、この場合のシステムインテグレーターは、自動車メーカーの生産技術部門と設備メーカーという合同体制になります。

 食品産業では、エンドユーザーが要求仕様を提示し、設備メーカーや食品機械メーカーがそれを受けて自動化構想設計から実際のシステムづくりまで一貫して受託することが多くなっています。この場合は、設備メーカーや食品機械メーカーがシステムインテグレーターの位置付けとなります。

 ロボット応用分野のシステムインテグレーションでは、塗装システムやパレタイジングシステムのようにある程度類型化が可能で、標準的なパターンに展開しやすい用途も存在します。しかし、大多数はエンドユーザーの要望ごとの一品一様となることが特徴です。そのため、システムインテグレーターにとっては「いかに効率良く個別対応をこなすか」ということが事業の死活問題となります。日本の優秀なシステムインテグレーターはある程度、得意な業種や作業を絞り込み、設計や実装の効率化にも工夫をこらし、手堅い対応をしています。しかし、容易に追従されないような高度な自動化をモノにするためには、手堅さだけではなく「チャレンジ」が必要となります。ここがロボット新戦略におけるシステムインテグレーター活性化のポイントになります。

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