ペットのネームプレートを設計してみましょうママさん設計者がやさしく教える「CNCフライス超入門」(3)(1/5 ページ)

ファブレスメーカーのママさん設計者がCNCフライスの特長や魅力、使い方を分かりやすく解説する連載。第3回はペットのネームプレートをお題に、エンドミルの基礎知識を押さえつつ、設計の始め方やCADの扱い方について説明する。

» 2015年06月24日 10時00分 公開

 モノヅクリストの皆さん、こんにちは! 前回までで、CNCフライスとはどんな機械でどんな仕組みで動くのかを解説いたしました。仕組みの概念を知っておくと、使用中にトラブルが発生した時に問題の切り分けがしやすくなりますので、ぜひ押さえておいてくださいね。

 本連載のメインテーマは「CNCフライスを使ったモノヅクリの楽しさを知っていただくこと」なので、今回はぐっと踏み込んで、「作りたいものを設計する手順」について触れてみたいと思います。その前に、CNCフライスでの加工に絶対欠かせない切削工具である「エンドミル」についてお話しします。

 なぜこんなことを先に説明するのかと言うと、時としてエンドミルだけではどうにもならない「加工不可」という衝撃の事態に直面することがあるからです。頑張って設計したのに、実は「加工不可」な形状だった場合は、設計を一からやり直さなくてはいけませんよね。そんなガッカリを予防する意味でも、「エンドミルは材料に対してどのように働くのか」そして、「お目当ての形状を加工するためにはどのエンドミルを使えばよいのか」という基本をつかんでおきましょう。

 エンドミルは、ぱっと見はドリルに似ていますが、ドリルは「先端の刃で穴を開けること」に特化しているのに対して、エンドミルは先端だけでなく側面にも刃が付いていて、穴加工だけでなく、外周切削、溝切削、曲面切削と多様に働きます。そのため用途別にいろいろなエンドミルが用意されているのですが、これがかなりバリエーション豊富なので、いきなりカタログから選ぼうとしてもきっと戸惑うはずです。ですので、CNCフライス加工でよく使われるタイプに絞ってまとめてみました(図1)。

図1 CNCフライス加工でよく使われるエンドミルの特徴

 基本的にはノンコーティングでも問題はないのですが、ドライカット(切削油を使わずに切削する方法)がメインのCNCフライス加工では、切削抵抗が大きくなって摩擦熱を持ちやすいので、切削面が荒れたりエンドミルの寿命が短くなる傾向があります。なので必要に応じてこうしたコーティング品を上手に使うとよいでしょう。これらの組み合わせで、切削する材質や形状に合ったエンドミルを選びます。

  • 選定例 1:ケミカルウッドの溝切削用に、ハイス(HSS)の二枚刃スクエアエンドミル
  • 選定例 2:アルミの曲面切削用に、超硬の二枚刃DLCコーティング・ボールエンドミル

……といった感じです。

 エンドミルの選定についてはオリジナルマインドのWebサイトでも解説されているので、参考にしてみてくださいね。

ポンチ絵を描こう

 それでは設計を始めましょう。今回は、好みと独断で「ペットのネームプレート」を作ってみたいと思います。設計の第一歩では、紙とペンで「ポンチ絵」を描きます。

 >>図面の描き方が分からない方はこちら!「ママさん設計者がやさしく教える「部品図の描き方超入門」」

 「え? 設計はCADでやるんじゃないの?」と思われるでしょうが、構想はあえて手描きのポンチ絵からたたき上げていくのをオススメします。理由は、しょっぱなからCADに向かってしまうと無意識のうちにCADオペレートに思考エネルギーを注ぐことになってしまい、発想の柔軟性が損なわれてしまうからです。逆に手描きには、アイデアを引き出させたり拡張させたり、思考をまとめる不思議な作用があるのです。絵心やセンスは全く必要ありません。要点をもらさないように、浮かんだイメージを自由に描き出しましょう(図2)。

 ポンチ絵の基本はとっても簡単ですよ。

  1. 尺度は関係なく、加工したい物の絵をただ描く。
  2. 各部の寸法を直接記入する。

図2 ポンチ絵の例

 こんな感じですね。自分で設計して自分で加工するならこれで十分なのですが、他人にイメージを伝えたい場合には、立体的に見える「斜視図」が描けると良いですね(図3)。

図3 斜視図はこんな感じです。
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