鯖江から世界に飛び出す“かっこいい老眼鏡”、自社ブランドで起こした革新のカギ【後編】zenmono通信(1/3 ページ)

モノづくり特化型クラウドファンディングサイト「zenmono」から、モノづくりのヒントが満載のトピックスを紹介する「zenmono通信」。前編に引き続き、今回も西村プレシジョンの西村昭宏氏の話をお伝えする。

» 2015年06月26日 08時00分 公開
[zenmono/MONOist]

 

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本記事はモノづくり特化型クラウドファンディングサイト「zenmono」から転載しています。


前編はこちら

福井、そして日本に愛される世界一の老眼鏡ブランドに

enmono 西村プレシジョンのペーパーグラスの注目すべき点は、全体のブランディング、そして販路を自分で開拓していくなど、企画から販売までのデザインがしっかり作られている部分だと思うんです。その辺りはどう考えていったのでしょうか。

enmonoの三木氏(左)と西村金属の常務取締役と西村プレシジョン代表を務める西村昭宏氏(右)

西村氏 自社製品や自社ブランドは、作るのはすごく簡単だと思います。でも一番大事なのは、作った後にどこを目指すのかという方向性をキチッと最初に決めることです。それによって販路であったり、ブランド力をどのように育てるのかが決まると思うんです。ですからブランドを立ち上げた時にまず決めたのは、このペーパーグラスで何を目指すのかというコンセプトでした。

 それがこちらです。「私たちのビジョン」「私たちのミッション」といっていますけど、まずは地元である福井、そして日本に愛される世界一の老眼鏡の眼鏡ブランドを目指そうというコンセプトです。世界一です。ペーパーグラスを手にする喜びと感動を世界中に届けたいという思いですね。

西村プレシジョンのビジョン

「まず地元に愛される」

enmono 「愛される」というのはどういった部分で具体化されるのでしょうか。

西村氏 それは食べものや酒で表すと分かりやすいと思うんです。例えば福井に来た人に対して「福井ならこれがおすすめだよ」って紹介される日本酒があるとしたら、それは地元から愛されているブランドだといえますよね。

 だから世界一を目指そうと思ったら、まずは地元に愛されるブランドにならなくてはいけない。これだけは私たちのミッションとして強く思っています。商売だけのことを考えれば、早く東京などの首都圏に出店する方がいいに決まってるんです。実際、東京出店のオファーもありました。でもまずは地元を大事にすることを優先しました。それはこういうビジョンをしっかり作っているからなんです。

enmono 「まず地元に愛される」という方針が決まるきっかけには何かあったのでしょうか。

西村氏 違う業種や歴史を見ても、やっぱり地元に愛されているブランド・企業だけが世界有数のブランドになってますよね。しかも継続的に発展している。そしたらわれわれも同じ手法を採るのが王道だと思ったんです。

enmono そういう道を選ぶと、グッと急成長というようにはいかないと思うのですが、その辺りはどう考えていましたか。

西村氏 時間はかかりますよね。ですけどわれわれのペーパーグラスは、一時の流行を目指しているわけではなく「老眼鏡のスタンダードになる」ことも1つの目標として持っています。

enmono 現在ペーパーグラスの出荷は何本くらいでしょうか。

西村氏 月1000本くらいですね。最初のころは月4本くらいだったんですよ。グッドデザイン賞の効果と、「ガイアの夜明け」で取り上げられたことで一気に認知度が広がったのかなと。

enmono 月に4本って、当時はかなりヒヤヒヤしませんでしたか。

西村氏 想定内ですね。最初は「ネットで1カ月に4本売れた!」ってすごく喜んでたんですよ。とにかく認知されるというのは重要なことです。

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