連載
» 2015年07月17日 07時00分 公開

“ロボット大国日本”は負けたのか:出場チームに聞く「DARPA Robotics Challenge」決勝戦の舞台裏(前編)、あれは本当に“惨敗”だったのか? (3/4)

[大塚実,MONOist]

なぜDRCに参加したのか

――産総研というと日本を代表するロボット研究開発拠点の1つですが、それが海外で、しかもDARPAが主催するロボット競技会に出場すると聞いて驚きました。DRCに参加した目的は何だったのでしょうか。

金広氏: 産総研ではもう10年以上ヒューマノイドの研究を続けていますが、東日本大震災が起きる前は、女性型のロボットを作っていろんなイベントに出展したり、どちらかというとエンターテイメント向けの応用が考えられていました。しかし震災後、危険な災害現場で活動できるロボットが求められるようになり、産総研でも現在、研究を行っているところです。

 そうしたタイミングで、DRCという災害対応ロボットの競技会が開催されることになりました。競技会に参加すると、様々な効果が期待できます。1つは競技会という明確な目標ができることで、スタッフが集中して開発できること。もう1つは、各国から集まる研究機関・大学のチームと競い合うことで、自分たちの技術レベルが世界の中でどのあたりにあるのか、知ることができるというものです。

photo 産業技術総合研究所 知能システム研究部門ヒューマノイド研究グループ研究グループ長 金広文男氏

 われわれとしては、DRCを災害対応ロボット開発におけるマイルストーンの1つと考え、参加を決断しました。

――実際に出場してみて、成果はどうでしたか。

金広氏: 目的は必ずしも「優勝すること」だけでは無かったので、何を持って達成できたか判断するのはなかなか難しいのですが、DRCに向けて大変な思いをしながら頑張り、それまでできていたものはより良く出来るようになり、できていなかったものもいろいろできるるようになりました。非常に良い機会だったと思います。

photo 大会前日リハーサルの光景(国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)提供)

――例えば、どんなことが新たに出来るようになったのでしょうか。

金広氏: われわれの研究グループはもともと2足歩行の研究を中心にやってきました。平地を歩かせることはもちろん、路面が多少デコボコしていても歩けるようにするとか、そのようなことが中心的なテーマでした。

 ロボットにはカメラやレーザーレンジファインダなどが搭載されていますが、今まではそれらの情報は使わずに、体の姿勢センサーや足裏の力センサーなどだけで、路面のデコボコに対応してきました。ところが、DRCの不整地タスクのように、コンクリートブロックがゴロゴロ積まれているような状況では、ちゃんと路面を計測しないと安定して歩くのは難しい。

 また移動するだけではなく、何か作業することも必要になります。作業となると、物体を認識して、腕を動かさなければなりません。こういったことは、じつはわれわれの研究グループでは、あまりやってこなかったことでした。DRCに参加したことで、これらの部分についてはかなり伸ばすことができたと思います。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.