SSDの限界を超える「ReRAM搭載SSD」5分でわかる最新キーワード解説

NAND型メモリの後継として期待されている「ReRAM(Resistive Random Access Memory)」とSSDを組み合わせることで、大容量高速化とエラー発生低減を狙う動きがあります。このSSDの限界を超える「ReRAM搭載SSD」について解説します。

» 2015年07月23日 09時00分 公開
[キーマンズネット]

 今回のテーマは、SSDよりも高速、DRAMよりも大容量のReRAMのエラー発生率を80%削減すると同時に33倍の高速化を達成する制御技術を搭載した「ReRAM搭載SSD」。ReRAMの本格実用化までには課題が多いようですが、この制御技術が発展すれば、チップ自身の成熟を待たずにReRAM+SSDのハイブリッドメモリ実用化が進みそうです。

「ReRAM搭載SSD」ってどんなもの?

 2014年は半導体メモリ開発に重大な技術開発や製品化の発表が相次いだが、中でもソニーとマイクロンによる16Gビット級ReRAMの開発発表やパナソニックの量産化発表などでReRAMがあらためて注目された。ReRAMについては2014年年3月に取り上げているので原理的な部分はそちらを参照願いたいが、その特長は次にまとめられる。

  • SSD(NANDフラッシュメモリ)より1万倍速い書き込み速度
  • 不揮発性(電源を断ってもデータを保持できる)
  • SSD同等(10年程度)の記憶保持期間
  • SSDよりもひと桁多い書き換え可能回数(100万回)
  • SSDの数分の1の消費電力
  • DRAMや他の高速次世代不揮発性メモリを超える大容量化(微細プロセス化、三次元積層化)が可能
  • 既存の製造プロセスが利用でき、希少材料資源を使わなくてよい

 これら特長から分かるとおり、ReRAMはDRAMとSSDの中間のような性能と容量を持つメモリだ。コンピュータに使われるメモリはCPUキャッシュとして使われる小容量だが抜群に高速なSRAM(Static RAM)、主記憶装置として使われるDRAM、そして大容量だがアクセススピードがDRAMより100万倍劣るSSD(NANDフラッシュメモリ)やさらに低速なHDDがある。図1に見るようにDRAMとSSDの間にはアクセス速度に大きな隔たりがあるが、ReRAMをはじめとする次世代不揮発メモリはこのギャップを埋める「ストレージクラスメモリ(SCM)」として注目されている。

photo 図1 コンピュータに使われるメモリのアクセス時間別の階層(資料提供:中央大学 竹内研究室)

 SCMの応用領域の1つが、DRAMとSSDの間をつなぎ、協調してデータ読み書きを行う中間メモリとしての利用法だ。SSDと組み合わせて使えば、ある時はSSDキャッシュとして働き、ある時はアクセス頻度の高いデータを専門に扱う1次大容量ストレージとして働くことができるので、SSDの能力を補完し、全体として高速かつ低消費電力のストレージ(ハイブリッドSSD)が実現すると期待されている。こうした用途のReRAMはまだ実用化前だが、素子としての課題を制御技術で克服する新たな方法を、2015年2月に中央大学の竹内健教授が発表した。その技術については後述するが、その前に他の半導体メモリを搭載するSSDについて簡単に見ておこう。

DRAM搭載SSDとはどこが違うの?

 従来はSSDのキャッシュとしてDRAMが使われてきた。DRAMは高速だが、容量はシリコンダイあたり現在最大4Gビットにすぎない。近々8Gビットに、ゆくゆくは16Gビットへと拡大していくと予想されてはいるものの、微細化は限界に近づいており、それ以上の容量拡大は難しい。

 ビット単価は依然として高額で、また揮発性メモリなので、記憶を保持しておくためには常に通電していなければならない。SSDに搭載する場合には、停電時や電圧変動時にデータをSSDに退避できるだけの時間を稼ぐバッテリーやキャパシタが必要になる。DRAMの容量を増やそうとすると高コストになり、モジュールのコンパクト化にも制限が出てくる。

MRAM搭載SSDはどこが違うの?

 この課題解消のためにReRAMに一歩先んじて製品化が図られているのがMRAM(Magnetoresistive RAM)搭載SSDだ。2014年11月、バッファローがMRAM搭載SSD製品化(2015年予定)に着手すると発表した。これはMRAMをSSDのキャッシュとして使い高速化を図る仕組みで、実現すれば世界初の市販MRAM搭載SSDとなる。利用するのは米Everspin社のSTT-RAM(Spin Transfer Torque-RAM、ST-MRAM。「関連するキーワード」の項参照)だ。Everspin社は世界で初めてのSTT-RAMの市販サンプル提供を2012年11月に開始しており、従来の16Mビットを大きく超える64Mビット容量の製品開発にも成功している。

 STT-RAMはSRAM同等の高速ランダムアクセス性能(35ns以下)を持ちながら、SCMとして利用できる大容量と、ほぼ無限(10の15乗回以上)の書き換え回数に対応できるのが大きな特長。ReRAMはこれより性能に劣り、書き換え回数も10の6乗程度だが、上記したように微細化・積層化の面ではSTT-RAMよりも優れ、3桁違いの16Gビット?32Gビット級の大容量化が可能な点と、シンプルな製造プロセスと材料コストの差で生まれる低コスト性が特長だ。

 DRAMに近い働きができるのがSTT-RAM、SSDに近い特長を持つのがReRAMだと考えておくとよいだろう。ReRAMは書き換え回数の制限があるためキャッシュとしては不向きな面があるが、高速性と大容量とを生かした1次ストレージとして利用し、SSDをよりアクセス頻度が低いデータのための2次ストレージとするといった利用法、およびSSDの管理/制御情報の保管場所としての利用が考えられる。

ReRAM搭載SSDの新制御技術

 こうした背景の中で登場したReRAM搭載SSDの新制御技術は、図2のような構造を想定したものだ。

photo 図2 ReRAM搭載SSDの構造のイメージ(資料提供:中央大学 竹内研究室)

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