激化する“IoTの陣取り合戦”欠けているのは「共通言語」AllSeen Alliance

IoTの未来像として、「いろいろなデバイスがシームレスにつながり、簡単に操作できる」様子が挙げられるが、AllSeen Allianceのディレクターはそのために必要なのは「共通言語だ」という。

» 2015年07月31日 17時00分 公開
[渡邊宏MONOist]

 「いろいろなデバイスがシームレスにつながり、簡単に操作できる――それがIoTへ期待されている世界観だが、現在はいろいろなデバイスとクラウドが乱立していて、それそれが別々に動いている。欠けているのは“共通言語”だ」

 そう語るのは、The Linux Foundation/AllSeen Alliance 日本担当ディレクター 福安徳晃氏だ。

 AllSeen AllianceはLinux Foundationが設立した、IoT向けの機器連携フレームワーク「Alljoyn」を提供する非営利団体。団体のプレミアムメンバーにはMicrosoft、パナソニック、Qualcomm、シャープ、Silicon Image、ソニー、キヤノンなどが名を連ねており、中核技術である「Alljoyn」はWindows 10でもサポートされている。

 2015年7月31日に開催された「IoT World Conference 2015」では、福安氏をモデレータにKii CEO 荒井真成氏、ルネサスエレクトロニクス 第二ソリューション事業本部 IoT事業推進室 室長 中島幸一氏、クアルコムジャパン 標準化グループ Director Engineering 内田信行氏の4人が「オープンソースで創るリアルIoT市場 - AllSeen Allianceの価値、ビジョン、動向に関して -」と題したパネルディスカッションを行った。

 Alljoynは福安氏のいうIoT“共通言語”となるべく、OSや通信サービス、カテゴリ、ブランドの垣根を越えた相互接続性、管理機能を提供するフレームワークだ。当初はクアルコムによるプロジェクトであったが、現在はオープンソース化され、現在では前述のようにLinux Foundationが設立したAllSeen Allianceによって開発が行われている。

 大きな特徴は“オープンなフレーワークであること”で、構成としては接続やセキュリティなどを基本ライブラリとして用意し、機器に応じてサービスを実装、さらにその上層部にデバイスやアプリケーションが位置するという3層構造をとる。OSやネットワーク(伝送路)への異存がないことも特徴で、伝送路はWi-FiやBluetoothの他、ThreadやZigbeeでも構わないとしている。

photo AllJoynの構成図。「基本ライブラリ」は接続やアクセス制御、暗号化などを提供し、「サービスフレームワーク」は機器間の共通インタフェースとなり、その上にUIを含むアプリケーションが定義される

 「デバイスに応じたスペックではなくソースコードがスペックなので、インターオペラビリティ(相互運用性)が高い。よくThreadとの違いを聞かれるが“Threadはアプリになりたくない”“AllJoynはトランスポートになりなくない”と方向性が違うので、ある意味、補完関係にあるといえる」(荒井氏)

 「さまざまな機器がスマートに接続され、快適な使い勝手も提供される」――これがAllSeen Allianceの描くビジョンだが、そこに市場はあるのかという問もある。「“つながること”だけではビジネスにならないが、そこにIoTによるネットワーク化とサービス提供という要素が加わり一般化すれば、“製品の売り切り”というビジネスモデルから脱却できる」と荒井氏は新市場創造の起爆剤としての期待を寄せる。

photo 左からクアルコムジャパン 標準化グループ Director, Engineering 内田信行氏、ルネサスエレクトロニクス 第二ソリューション事業本部 IoT事業推進室 室長 中島幸一氏、Kii CEO 荒井真成氏

 ただ、現在のように「照明のIoT化」「エアコンのIoT化」と個別に作り込んでいては利用者としても煩雑であるし、提供側としてもコスト面でペイしない可能性がある。そのため、「さまざまな機器をスマートに接続して、快適に使える基盤」を目指すAllSeen Allianceに価値があるとも荒井氏は述べる。

photo 家庭内におけるIoTの現状。照明は照明でクラウドにつながり、エアコンはエアコンでクラウドにつながる。結果として起こるのはスマホ画面が家電操作のアイコンで埋め尽くされることだ

 半導体メーカーであるルネサスエレクトロニクスの中島氏も、「製品売り切りではなく、サービスが収入源になるかも可能性がある」と加えて発言する。しかし、「(AllSeenのような)オープンプラットフォームを利用したIoTが普及することで、個人も含めた参入が増えてそこで大きな経済効果を生むことになるかもしれない。メーカーとしては、そういった状況の変化に備える必要がある」と続け、時代の流れに対応し、メーカーとしてのビジネスモデルも変革を迫られると現状を説明した。

 AllSeen Allianceには先日、家電大手のPhilipsもプレミアムメンバーとして加盟しており(2015年7月29日付)、現在の加盟者社は170を超えた。ただ、いわゆるIoT団体はIICやOIC、Thread Group、IPSO Allianceなど多数あり(AppleのHomekitやGoogleのProject Brilloは厳密な意味では団体と呼べないが、注目すべき技術・存在である)、各種団体の主導する規格や技術のどれが主流になるのかという“IoTの陣取り合戦”が激化している。

 この“陣取り合戦”について内田氏は「技術は日進月歩であり、何が主流になるかは市場が決めること」とだけコメントしたが、「(IoTという概念は)1つの方式、1つの技術だけで完結するとは思えない。AllJoynは非AllJoynの技術、デバイスとも接続できるので、そのメリットはあると考える」と“相互接続性の高いフレームワーク”あることのメリットを協調した。

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