ロボットがデジカメを全自動で作る時代へ、キヤノンが2018年をめどに製造マネジメントニュース

キヤノンは、国内のデジタルカメラ、デジタル一眼レフカメラ、交換レンズの生産を完全自動化する方針を明らかにした。生産の合理化を進め、国内回帰を進める。

» 2015年08月05日 07時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 キヤノンは2015年8月4日、国内のデジタルカメラ、デジタル一眼レフカメラ、交換レンズの生産の完全自動化を進めていく方針を明らかにした。組み立て生産の合理化を進め、国内回帰を強化する方針。さらなる生産技術の高度化に向け、大分キヤノン安岐事業所内に新たに約133億円を投資し総合技術棟を建設する。

「マシンセル」実現へ

 キヤノンは1998年にセル生産方式を導入。1999年にはベルトコンベアを完全に撤去し、高い柔軟性を持つセル生産を中心に、デジタルカメラやデジタル一眼レフ、交換レンズなどの生産を進めてきた。デジタルカメラ市場は、ソニーやニコンなど日本企業が世界的にも強いが、価格下落が激しくコスト競争力が求められるために、多くの企業が台湾のEMS(電子機器受託生産サービス)など外部委託生産を活用するが、キヤノンは自社生産にこだわり、生産能力を高めることでコスト競争力強化を進めてきた。

 2000年代後半からはセル生産をさらに強化するために、人間の能力を拡張しセル生産の補助を機械で行う「マンマシンセル」の導入を進めてきた。今回はさらに生産能力の高度化を進め、2018年をめどに生産の完全自動化を目指すという。実際の製造作業はロボットや製造装置で行い、人は生産ラインの改善などを担当するという。「工場から人がいなくなるわけではなく、改善作業など役割を変えていくことになる」(キヤノン広報)という。

 完全自動化生産ラインは、同社の九州地域のカメラ生産拠点である、大分、長崎、宮崎で適用を進める計画。生産品目についても、コンパクトデジカメ、デジタル一眼レフ、交換レンズなどの品目を幅広く対象としていくという。

生産技術棟を建設

 これに合わせて生産技術力を強化することを目的とし、大分キヤノン 安岐事業所内に総合技術棟を新設することを決定した。2016年年初に着工し2016年内の稼働を予定する。新技術棟には生産技術部門、製品技術部門、生産工機部門などを集結させ、生産技術力の高度化を進め、効率性の高い生産体制の確立に取り組む。新技術棟の建築面積は約6600m2で、延床面積は約1万9700m2

 キヤノンでは、基本的にデジタルカメラの生産設備もほとんどを内製しており、新たに完全自動化を進める中で必要なロボットや製造装置についても内製化を基本方針としている。

 生産の完全自動化については、装置生産を行う製品領域では少なくはないが、デジタルカメラのように組み立て生産で需給変動が激しい領域での完全自動化は、実現すれば画期的なものとなる。

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