京都府初の高精度陽子線がん治療システム医療機器ニュース

日立製作所は、京都府上京区内に建設予定の「永守記念最先端がん治療研究センター」向けに、京都府初となる陽子線がん治療システムを受注したと発表した。

» 2015年08月12日 08時00分 公開
[MONOist]

 日立製作所は2015年7月27日、京都府上京区内に建設予定の「永守記念最先端がん治療研究センター」向けに、陽子線がん治療システムを受注したと発表した。京都府での導入は初で、2018年度中の稼働開始を目指すという。

 陽子線がん治療は、放射線によるがん治療法の1つで、陽子を加速器で光の70%のスピードに加速させ、がん細胞に集中して照射することでがんを治療するものだ。治療に伴う痛みがほとんどなく、身体の機能と形態を損なわないため、治療と社会生活の両立が可能だ。そのため、生活の質(Quality Of Life)を維持しながら、がんを治療できる。

 今回、同社が受注した陽子線がん治療システムは、「スポットスキャニング照射技術」と「動体追跡照射技術」を採用した回転ガントリー2室を備えている。

 スポットスキャニング照射技術とは、がんを照射する陽子線のビームを従来のように拡散させるのではなく、細い状態のまま用い、照射と一時停止を高速で繰り返しながら順次位置を変えて陽子線を照射する技術となる。複雑な形状をしたがんでも、その形状に合わせて高精度で陽子線を照射でき、正常部位への影響を最小限に抑えることができる。陽子ビームの利用効率が高く、不要な放射線の発生が少ない上、患者ごとに準備が必要だった装置(コリメーター、ボーラス)も不要。そのため、患者や病院スタッフの負担を軽減でき、廃棄物の発生量も低減できるという。

 また、動体追跡照射技術は、呼吸などによって体内で位置が変動するがんでも高精度で照射できる技術。腫瘍近傍に2mmの金マーカーを刺入し、CT装置や2方向からのX線透視装置を利用して、透視画像上の金マーカーをパターン認識技術で自動抽出し、空間上の位置を周期的に繰り返し計算する。金マーカーが計画位置から数mmの範囲にある場合だけ照射することで、高精度な照射を可能にする。同技術は、動いているがんの範囲を全て照射する方法に比べて、照射体積を2分の1〜4分の1に減らし、正常部位への照射を大幅に減らすことが可能だという。

 永守記念最先端がん治療研究センターは、日本電産の創業者であり代表取締役会長兼社長(CEO)の永守重信氏が京都府に寄付するもの。同システムや、その他最先端のがん治療機器を1カ所に集約し、京都府立医科大学附属病院の放射線治療施設として運営される。

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