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» 2015年08月25日 10時00分 公開

チーム医療現場を支える臨床情報システム(CIS)の進化医療機器開発者のための医療IT入門(2)(2/3 ページ)

[笹原英司,MONOist]

ユーザー数が多く利用形態が複雑な看護支援システム

 病院組織の中で一番職員数が多いのは、看護師を抱える看護部門だ。看護業務支援に関わるシステムとしては、看護職員管理や看護勤務管理の他、病棟の空き状況や入院中患者を把握する空床管理、医師からのオーダーをベースに指示票の役割を果たす看護ワークシート、看護過程(アセスメント、診断、看護計画、実施、評価)と連携する看護記録、医療安全を支援する与薬管理などの機能が実装されている。

 同じ看護業務でも、日勤制主体の外来勤務とシフト制主体の病棟勤務では、臨床現場でシステムを操作する端末の場所やタイミング、利用頻度が異なり、アイデンティティー/アクセス管理やキャパシティプランニングの前提条件もまちまちだ。また病棟業務の場合、ナースステーションだけでなく、患者に近いベッドサイドから無線LANやモバイル端末を介してシステムを利用する場面が増えている。

 今後、看護業務の効率化や患者満足度の向上のために、ベッドサイドにおけるセンサーやウェアラブル機器の導入が進むと、看護業務システムにおいては、ユーザー認証/権限管理、患者データの暗号化、モバイルデバイス管理(MDM)といったセキュリティ強化策が求められるようになる。

制御系(OT)と情報系(IT)の接点となる臨床検査情報システム

 病院の臨床検査部門に設置された臨床検査情報システム(LIS:Laboratory Information Systems)は、オーダーエントリーシステムから受け取った検査依頼情報をもとに、検査部門側で受付処理し、指示内容に基づく検査を実行し、その結果に関するデータを関係部門に送信する機能を持っている。医師または歯科医師の指示のもとで、微生物学的検査、血清学的検査、生理学的検査などを行う臨床検査技師がLISの主要ユーザーだ。

 また臨床検査には、さまざまな診断系医療機器が利用されており、心電計や脳波計と連携した臨床生理検査システム、内視鏡と連携した内視鏡業務支援システム、病理検査機器と連携した病理業務支援システムなど、個々の医療機器にひもづいた専門特化型システムが導入されている。今後、ウェアラブル機器や遠隔診断支援技術が普及拡大すれば、医療機器を支えてきた制御技術(OT:Operations Technology)と情報技術(IT)の密な連携により、人工知能(AI)技術を活用したビッグデータ分析/可視化の適用なども期待される。

医療ビッグデータへと進化する放射線情報システム

 病院の放射線部門は、X線、電子線、ベータ線、ガンマ線などの医療用放射線を用いた診断検査や放射線治療を行っている。放射線情報システム(RAS:Radiology Information Systems)は、オーダーエントリーシステムから受け取った放射線検査の依頼情報をもとに、放射線部門側で受付処理して、指示内容に基づく検査を実行し、医用放射線機器で収録した画像データと診断レポートを関係部門に送信したり、照射録の管理を行ったりする機能を持っている。

 医用画像保存通信システム(PACS:Picture Archiving and Communication Systems)は、デジタル化された医用画像データを自動的に収集し、記録管理やデータ転送/参照を行うシステムである。医師または歯科医師の指示のもとに、放射線を人体に対して照射する業務を行う診療放射線技師が、RASやPACSの主要ユーザーである。

 PACSに関連する標準規格として、主に文字情報を取り扱うための「HL 7(Health Level 7)」と、医用画像を取り扱うための「DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)」がある。これらの標準規格を採用することによって、機器/装置間の相互接続性(Interconnectivity)が確保される。さらに、どの場面にどのような形でシステム同士の情報交換を行うかのルールを設定すれば、相互運用性(Interoperability)が確保され、医用放射線機器をデータソースとした医療ビッグデータ分析/可視化技術の実現へと拡張させることが可能だ。

 参考までに、米国の国立標準研究所(NIST)が2015年4月に公表した「ビッグデータ相互運用性フレームワーク・バージョン1.0草案」(http://bigdatawg.nist.gov/V1_output_docs.php)では、図2のような形で、Hadoopクラスタによる非構造化データの分散処理をベースとする病理診断画像化/デジタル病理診断のユースケースが示されている。

図2 図2 医療ビッグデータにおける病理診断画像化/デジタル病理診断のユースケース例(クリックで拡大) 出典:NIST Big Data interoperability Framework Version 1.0 Working Drafts(2015年4月)

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