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» 2015年09月03日 12時00分 公開

インタビュー:ヒト型ロボットは道具を超え「自分の鏡」に、ヴイストン大和社長に聞く (2/4)

[渡邊宏,MONOist]

――ヴイストンの会社概要には、「ロボット開発を進めるうちに、足りないのは技術ではなく、人間と共に時間を過ごせるために必要な“こころ”だと思うようになってきた」とあります。その心境の変化はなぜ起こったのでしょう。

大和氏: ロボカップに参加していた頃、VisiONがどんな考え(判断)をしているかを外から知るため、ロボットの判断内容に応じて目のLEDを光らせたことがあります。自分でプログラミングしているので、ロボットの判断は自分が一番よく知っているはずなのですが、意外な驚きがありました。

 どんな判断をしているのかを可視化したのすが、意外な判断をしていることもあったりしまして(笑)。ロボットと人間のつながりにも、いろいろなカタチがあるものだと感じたのを覚えています。

 別の話ですが、VisiONとロボタイマー(日清食品「カップヌードル」のキャンペーン賞品としてヴイストンが開発したロボット)を人前に持っていくと、100人中90人がロボタイマーの前に集まるんです。

日清食品「カップヌードル ロボタイマー」 日清食品「カップヌードル ロボタイマー」
photo 2004年のロボカップ世界大会で優勝した「VisiON」

 ロボタイマーはおもちゃの域を出ないロボットで、技術的にさほど高度な事をしていません。ですが、ロボタイマーは人間に受け入れられたのです。技術的に高度でなくともロボットは人間に興味を持ってもらえる、人間との距離を縮められる可能性があると感じられた出来事です。

――2006年の著作「ロボットと暮らす 家庭用ロボット最前線」(ソフトバンク新書)では、家庭用ロボットの1つの将来像として「移動機能の必要もなく、コミュニケーション機能を持ったエージェント的な存在」を挙げています。CommUやSotaのようなロボットを既に構想していたのですか?

大和氏: 言及した家庭用ロボットについて正確に言えば人間やロボットがネットワークでつながっていて(当時はスマートフォンが一般化していませんでしたが)、ロボットは人間を助けるティンカーベル(妖精)的な存在というイメージです。でも家庭用ロボットの最終的なイメージはパートナーやアシスタントではなく、自分の鏡。なくてはならない分身になると思っています。

――家庭用ロボットの最終形が「自分の鏡」ですか?

大和氏: なぜSNSがこれほどまでに普及したのか。その理由の1つに承認欲求を挙げることができるでしょう。既存の手段では「自分はここにいるよ」と回りに示せない人が増え、リツィートやいいね!、ふぁぼなどで承認欲求を満たしているのではないでしょうか。

 家庭にコミュニケーション機能を持ったロボットがいて、常に使ったり、話しかけていると、ロボットが自分のことを一番よく知っている存在になります。ロボットは物事を忘れませんから、知識を蓄えていくとある意味、教師であり、親であり、兄弟である存在になります。

 人間は自分で自分を証明できず、社会との関係性で自分を証明します。ロボットの存在が人間と社会の関係性を健全なものにしてくれるのかもしれません。これこそが家庭用ロボットの本当の価値で、道具の置き換えをロボットに求める限り、それは道具を便利な道具で置き換える事に過ぎません。

 将来的に家庭用ロボットの立ち位置は、「ペット以上、人間未満の存在だけど、ヒトの鏡」になると思っています。

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