デジタルツインを実現するCAEの真価

見えてきた、クラウドならではの使い方やそのメリットMONOist CAEカレッジ リポート(2/3 ページ)

» 2015年09月18日 11時00分 公開
[加藤まどみMONOist]

クラウドのメリットとデメリットは

 続いて日本アイ・ビー・エム クラウド・マスターの安田智有氏が「最新事例とベンチマーク結果からひも解く、CAEのクラウド化の『いま』と『これから』」と題し、CAEを中心としたクラウドの活用動向を解説した。


photo 日本アイ・ビー・エム クラウド・マスターの安田智有氏

 ITインフラを検討する際にユーザーがまず注目するのは「コスト削減効果」だ。安田氏によると、そのコスト検討で忘れがちなのが電気代や場所代に関するものだという。電気代にはそもそも分電盤工事が加わったり、設置に関しては耐震補強工事、発電機、UPS、消防設備、また法令対応などの人件費も掛かってくる。

 例えばx86サーバ350台、1コア当たり8Gのメモリで、サーバ購入の際のディスカウントも含めて3年使うとして月々のコストを試算してみると、オンプレミスよりも同社のHPCクラウドサービス「SoftLayer」を利用した方が安価に抑えられる。この際コストに効いてくるのは、ハードウェアの購入とその保守費で、これは全体の45%ほどを占めるという。また場所代は場合によっては10%ほどになる。これ以上台数を増やすとオンプレミス(自社運用型)の方がコストメリットが出てくる場合もあるという。

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 コスト以外のクラウドのメリットは大きく3つある。1つは市場競争による価格の低下だ。SoftLayerでは過去2年に大きな値下げを3回実施している。また新しいCPUは大体1年ごとに出るため、価格は据え置いたまま性能を上げるといった選択もあり得る。また見落としがちなのが撤退コストで、使わなくなったときにすぐ止められることは重要なポイントだという。

 特にアウトプットデータが大きくなったり大量にジョブを実施したりする場合には、データの入出力の効率化が課題になる。その場合は高速ファイル転送や物理メディアへのコピーといったサービスも利用できる。ビジュアライゼーションについては、クラウドベンダーは大体の所在地を知らせているものの、インタラクティブに使えるかは実際に試してみなければ分からないということだ。

 安田氏は先端的な使用例として、大学発のベンチャー企業であるバイオニックラボの例を紹介した。同社は義手や義足を作る企業で、個人に合わせた設計対応が必要になる。だが設計者が個人の使い心地などを理解するのは難しい。そこで個人に義手や義足とセンサーを付けて生活してもらい、そこから上がってくるデータをリアルタイムで分析しながら設計データに反映させていく。SoftLayerが標準で用意しているセキュリティを適用しながら、個人情報を隠ぺいしつつ設計にフィードバックしているという。

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