特集
» 2015年10月06日 08時00分 公開

デライトものづくり:政府主導のモノづくり革新は、日本の製造業に“ワクワク”をもたらすか(後編) (2/4)

[三島一孝,MONOist]

超上流デライト設計・生産研究

革新的デライトデザインプラットフォーム技術の研究開発

photo 革新的デライトデザインプラットフォーム技術の研究開発を担当する、東京大学大学院工学研究科精密工学専攻教授 鈴木宏正氏

 革新的デライトデザインプラットフォーム技術は、従来の「性能品質」や「当たり前品質」に加えて、「魅力品質」を持つ製品を仕組みとして開発できるプラットフォームを構築することを目指すもの。従来の設計ツールでは性能や安全性などは確保できるものの「魅力」を支援する機能は備えられておらず、設計者や製品企画者の完成に委ねられる領域が大きかった。また、感性デザインなどの手法は存在するものの、専門家のためのプロセスとなっており、一般設計者の業務を支援できるようにはなっていなかった。これらを改善するためのツールを開発することが目的だ。

 具体的には感性要素を含む設計上流を支援し、従来の詳細設計支援と統合されたツールの開発を行う。まず感性を指標化するために、ユーザーの感性と製品の属性との関連性を示す感性データベースの構築を推進。さらにその感性データベースのデータとMBD(モデルベース開発)をひも付けて、感性モデルのプロトタイプを開発する。さらに感性モデルと電機系および機械系CADを連携する機能を開発し、感性価値を製品に落とし込む仕組みを作る。同テーマを担当する東京大学大学院工学研究科精密工学専攻教授 鈴木宏正氏は「感性指標により製品価値を探れる『デライトマップ』などを用意。具体的な製品設計事例をモチーフとし、プラットフォームの開発を進めていく」と述べている。

超3D造形技術プラットフォームの開発と高付加価値製品の創出

photo 超3D造形技術プラットフォームの開発と高付加価値製品の創出を担当する、横浜国立大学大学院工学研究院教授 丸尾昭二氏

 超3D造形技術プラットフォームは、マイクロ・ナノレベルの光3D造形などを含む光造形技術の用途拡大を目指す取り組み。ただ、現状ではマイクロ・ナノ造形の描画線幅の拡張と造形速度の向上、積層段差による加工精度の低減、適用材料の制限、の3つの大きな課題を抱えている。これらの課題を解決し、MEMSやウェアラブルデバイス、フォトニクス、先端医療などさまざまな用途での活用を目指すのが同プロジェクトの目標である。

 具体的には、加工線幅の自在制御によるシームレス3D造形(線幅50nm〜100μm)、3D空洞化モデルによる造形時間の短縮(10分の1以下)、マルチスケール全方位型造形による高精度な3D造形の実現、鋳型技術による多様なセラミックス機能素子の創製、生体適合ゲルを用いた人工臓器の開発(cm単位)を目指すという。

 マイクロ・ナノ造形の描画線幅の拡張と造形速度については、空間光変調による集光スポットの自在制御などに取り組む。積層段差の問題については、あらゆる方向から積層造形が可能な全方位型造形システムの開発を進める。材料の問題について、鋳型技術を活用しセラミックスやゲルなど多様な材料を試していくという。実用化や事業化に向けて「超3D造形ものづくりネットワーク」を設立し、実証などに取り組んでいく。

チーム双方向連成を加速する超上流設計マネジメント/環境構築の研究開発

photo チーム双方向連成を加速する超上流設計マネジメント/環境構築の研究開発を担当する、産業技術総合研究所 集積マイクロシステム研究センター 総括研究主幹 手塚明氏

 同プロジェクトでは、超上流設計の実現について壁となる設計プロセスの最適化を目指す。現在の個別の設計プロセスの改善とともに、自社の外との連携ができる体制の構築に取り組む。具体的には、デライト設計の質向上ポテンシャルとプロセス効率の指標提案や評価、デジタルヒューマンモデルをベースにした世界初のデライトデザインツールの提案、日本初のデザイン・設計の費用対効果調査の研究開発などに取り組んでいく。

 研究開発チームの他、研究開発の暫定ユーザーチームとして会費制コンソーシアムを形成。研究開発の事業化予定企業とともに三位一体体制で研究開発を進めていく。

Additive Manufacturingを核とした新しいものづくり創出の研究開発

photo Additive Manufacturingを核とした新しいものづくり創出の研究開発の研究開発を担当する、東京大学 生産技術研究所 教授 新野俊樹氏

 同プロジェクトでは、Additive Manufacturing(付加造形、3Dプリンティング)技術を有効活用できる環境の構築に向けた周辺環境の整備に取り組むものだ。3Dプリンティングは「夢の技術」と期待されながらも、その利用はまだまだ限定的だといえる。現状だけを見れば、製造技術としては精度などで性能が低いといえる他、その特徴を生かしたアプリケーション(製品)がそれほどなく、設計するための便利なツールがないという問題を抱えている。

 そこで同プロジェクトでは、材料特性の向上により製造力の向上を推進する他、3Dプリンティングでなければ作れない付加価値の高い施品の提示による製品力の向上、ベンチマークとしてスポーツ義足が設計できるツールを提供するなど設計力の向上などに取り組む。

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