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» 2015年10月16日 07時00分 公開

山浦恒央の“くみこみ”な話(78):食わず嫌いを直そう、朝顔の観察日記とデータ収集(その6) (2/4)

[山浦恒央 東海大学 大学院 組込み技術研究科 准教授(工学博士),MONOist]

3.1 何を調べたいか定まっていない

 そもそも、目的が何か正確に定まっていない場合が少なくありません。当たり前ですが、そんな状態でデータを収集しても意味はありません。「朝顔の観察日記」では、目的が明確で、小学生もちゃんと理解しています。一方、卒業研究に取り組んでいる学部4年生の中には、研究の目的をきちんと認識していない場合があります。

 その結果、「とりあえずいろんなデータを収集するアンケートを作成て、実験すりゃなんか分かるだろう」とやってみたものの、何をしたいのか本人自身が分かっておらず、アンケート調査が無意味な作業になることがあります。もちろん、予備的な実験を行うことは重要なことですが、何らかのデータを収集する前に、「何がしたいか」を十分に考える必要があります。

 昔からそうですが、データ収集にこだわりすぎて肝心の目的を見失うケースが少なくありません。データ収集は、面倒で時間のかかる作業なので、終了すると大きな達成感を感じます。でも、重要なのは、「収集したデータで何を調べたいか」です。試験の前日、徹夜で詰め込み勉強をすると、「疲労感」が「学習の進度」に化けることは誰しも経験することです。

 ある出版社の編集者から聞いた話ですが、「文学系新人賞の応募作品を送ってくるとき、『一生懸命、頑張りましたのでよろしくお願いいたします』との手紙を添付してくる人がいますが、そんな人の作品は良くない場合が少なくありません。編集者としては、『頑張らずにいい作品を書ける』が理想なんですよ」とのことです。頑張ることより、目的達成が重要です(とはいえ、芸術の分野では、ごく一部の天才を除いて、頑張らないと目的を達成できないでしょうが)。

3.2 データが存在しない

 「過去のデータと比較して、関係性を見つけ出そう」と考え、過去のデータを分析しようとしても、プロジェクトにデータが残っていないことがあります。データが残っていても、データがプロジェクトによってばらばらで、高精度な分析ができない場合もあります。

 結果として、「ソースコード行数」「開発工数(人月の実績値)」「開発コスト」ぐらいしか使えそうなデータが見当たらない可能性が少なくありません(注1)。アドホックな開発(注2)を実施しているチームでは、使用できるデータが大きく制限されると考えた方が良いでしょう。

注1:どんなにいい加減なプロジェクトでも、さすがに、この3つのデータが残っていないケースはないでしょう。

注2:日本語で「臨機応変な開発」と言えば聞こえはいいのですが、要は、「開発プロセスがきちんと決まっていない行き当たりばったり」方式です。

3.3 データ収集時の整合性が取れていない

 アンケート記入方式でデータを収集する場合、「タイミング」や「条件」が同じか確認する必要があります。統一されていない場合、ノイズだらけのデータが集まり、データを分析しても意味不明で不可解な結果が出てきます。完全に統一することは不可能ですが、事前に、どのタイミングでアンケートを取るか考えましょう。

 話はそれますが、ワインを飲む際、「ワインの提供温度」と「ワイングラスの形」によって、同じワインでも香りや味の感じ方が大きく変化します。渋味の強い高級ワインを冷やして飲むと、渋みの素であるタンニンが舌に張り付き、口の中に紙やすりを敷き詰めたようにギシギシして、本来のおいしさを実感できませんが、室温(注3)にすると、タンニンが丸く甘くなりボディーが膨らみます。また、ワイングラスの形が変わると、ワインが舌のどの部位に当たるかが変わり、味わいも大きく変化します(注4)。

 渋みの強い赤ワインを8度(ビールの提供温度)に冷やし小さなワイングラスで出す場合と、18度にして金魚鉢ほど大きなワイングラスで提供する場合、ワインを扱うプロでも違うワインと感じるはずです。ワイングラスや提供温度が違うと、同一条件下で判断できません(注5)。感性表現のアンケートを作成する場合は、注意が必要です。

注3:大抵の場合はヨーロッパの「室温」ですので、18度前後。日本人の感覚では少し寒いと感じるでしょう。

注4:舌の「味覚マップ」によると、先端は甘味を感じ、両端は酸味、真ん中が塩味で奥が苦味を感じるといわれています。なので、口の小さいグラスほど、甘味を強く感じますし、大きなグラスは、酸味や苦味を感じるそうです。

注5:ワイングラスには、「ISO試飲用ワイングラス」があり、形や大きさがきちんと決まっています。プロの試飲会では、世界のどこに行っても必ずこのグラスが出てきて、赤ワイン、白ワインに関係なくこのグラスで試飲します。このグラスは小振りかつ頑丈で、1脚500円前後で買えます。

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