モノのインターネットを再考するSYSTEM DESIGN JOURNAL(3/5 ページ)

» 2015年10月27日 07時00分 公開
[Ron WilsonAltera Corporation. MONOist]

仮想化とその短所

 クラウドを中心とする私たちのシステムの要件は、ネットワークを経由して、大規模な変更が既に進行中のデータセンターにまで拡大しています。イベントでトリガされる計算集約的アプリケーションをデータセンターで実行することが多くなるにつれて、サーバとストレージの仮想化が必須となります。

 データセンターは、利用可能なリソースのみでアプリケーションを実行し、しかも外部システムのサービスレベル要件を満たすことが可能でなければなりません。その結果、仮想化によってデータセンターの内部ネットワークに対する要求が増え、ローカル・ポートのイーサネットは25Gbps、ラック間は400Gbpsへと高速化し、データセンターのネットワークには通信事業者レベルのサービス保証が求められます。

 その他にも困難な点があります。アルゴリズムの中には、複数サーバ上の複数コアに分散できないものがあります。そのようなアルゴリズムはシングルスレッド性能に依存するため、高速化するには高速ハードウェアで実行するしかありません。しかし、GPU、FPGA、Xeon-PhiなどのハードウェアアクセラレータをサーバCPUに付加すると、ハイパーバイザが前提とする均質性が損なわれます。

 一部のクラウド・アーキテクトは、すべてのサーバがスイッチ・ファブリックを介して容易にアクセスできるアクセラレータのプールを提案しています。CPU ごとにアクセラレータを実装するというアーキテクチャに賛成するクラウド・アーキテクトもいます。

 しかし、この議論はアクセラレータ・チップへのニーズよりもさらに深化します。クラウドは理想的には、各リンクが必要とするQoSを保証する、専用接続でリンクされた必要な数だけの I/O、計算、ストレージ・リソースを提供します。この要望をソフトウェア定義の仮想化データセンターに当てはめると、CiscoのCTOであるTim Edsall氏がシンポジウムで紹介した、「アプリケーション中心のインフラストラクチャ」というCiscoのビジョンに行き着きます。

 Edsall氏は、データセンターの内部に SDN(Software Defined Network)を導入することを提案しました。アプリケーションが呼び出されると、利用可能なポート、計算、ストレージリソース上のオブジェクトをクラウド・マネジャーがインスタンス化します。また、特定のQoSパラメータを持つリンクがSDNから要求すると、ネットワークがその送信リソースとスイッチングリソースを用意し、要求された帯域幅とレイテンシを持つリンクを作成します。

 Edsall氏は次のように述べています。「このアイデアは、アプリケーションに関する何らかのコンテキストをネットワークに提供し、ポートごとだけでなくアプリケーションごとの統計情報を収集することです。今日、人々はデータセンターで実際に行われていることを驚くほど知りません」

 マスストレージさえ使用されます。サーバカード上とラック内にあり、QoSが保証されたネットワークでディスクに接続されたフラッシュベースのストレージは、クラウド内のデータセットを必要とする計算ノードに対する実質的なローカルデータセットになります。

 この考え方の終点は、ユーザーには完全にアプリケーション固有であるように見え、オペレータにとっては完全に仮想化されたクラウド・データセンターです。これは、ユーザーのアルゴリズムに役立つように構成された処理、アクセラレータ、ストレージリソースへのアクセスをユーザーに提供します。オペレータにとって、データセンターはソフトウェア定義可能な全く同一の大量のリソースです。

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