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» 2015年10月28日 10時00分 UPDATE

3DCG映画の制作現場から学ぶ:失敗するなら早めに――「アナ雪」「ベイマックス」をヒットに導いたディズニー式カイゼン (3/4)

[宮田健(dpost.jp),MONOist]

「ベイマックス」を支えたツール群

 クーニー氏は「アナと雪の女王」が完成した後、まだ映画が上映開始となっていない段階で次の仕事へと移ることになる。それが「ベイマックス」の制作だ。


 「ベイマックス」の制作においては、まずは「アナと雪の女王」における課題の洗い出しからスタートした。そしてクーニー氏は「エフェクト・リグ」に焦点を当てようと考える。エフェクト・リグとは、例えば「ベイマックス」のジェット噴射などの、エフェクトを動きとともに制作するというものだ。これらのエフェクト・リグを1つ作ってしまえば、それを再利用したり、目的を変えることで別のことに使ったりできる。これを他のアーティストに教え、使ってもらえれば制作効率が上がると考えたのだ。

 ここでもリサーチからスタートする。「ベイマックス」の舞台は、サンフランシスコと東京がミックスされた架空の都市「サンフランソーキョー」。まずチームはサンフランシスコと東京の特徴的な街並み、具体的には渋谷や原宿をリサーチしたという。「その街並みが、最終的なデザインに影響を与えているのが分かると思う」(クーニー氏)。


 「アナと雪の女王」から進化したことは、「エフェクト・リグを使うことで、より複雑なものもプレビズが可能になったことだ」(クーニー氏)という。例えば、CGではなく2D制作の映画において、煙をプレビズ段階で表現するには実際にアートとして描く以外に方法はなかった。しかし、2005年公開のディズニーにおける初の3DCG作品「チキン・リトル」(原題:Chicken Little)以降、パラメーター設定だけでリグを作成できる仕組みをMayaで用意したことで、制作時間もリソースも削減できることが実証されたという。

 そこで、「ベイマックス」においては、ロケット発射におけるビジュアライザの作成からスタート。日本のアニメで表現されるようなロケットの煙を簡単な形でモデリングを行い、これをMayaのドリブンキーとして定義した。これをアーティストたちに使ってもらい、そのフィードバックを基にダイナミックなリグとして提供。プレビズ段階で、その動きを簡単にプレビューできるようにした。

 さらに、ジェット戦闘機が高速に旋回したときに翼の両端で飛行痕跡を残す「ウィングチップ・ボルテックス」の再現もエフェクト・リグとして作成した。これにより、飛行シーンを初期段階からイメージできるようになり、最終的なイメージとほぼ変わらないものが作れたという。

 実際の飛行シーンを見ていただくと、そのロケット噴射の様子が見られる。ぜひ、それらのエフェクトに注目してほしい。



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