経営難から大逆転! 独自の精密加工で新分野を開拓した金型メーカーイノベーションで戦う中小製造業の舞台裏(3)(2/7 ページ)

» 2015年10月30日 08時30分 公開
[松永弥生MONOist]

住宅建材用の金型需要が増し、ピンチを逃れる

 阪神淡路大震災で崩壊した建物の多くは、1981年の建築基準法改正前に建てられた木造住宅だった。被災地を調査した結果、外壁がモルタル塗りの住宅は被害が大きかった一方で、セメントと木質系原料を混合して製造する窯業系サイディングを使った住宅の被害は少なかった。被害があった住宅でも、壁の亀裂や一部が脱落する程度の被害にとどまっていることが判明した。

 その結果、住宅建材メーカー各社は、壁の素材を窯業系サイディングのパネルに切り替えるために、相次いで工場を新設した。それに伴いパネルを作るための金型の需要も高まった。

 三木製作所も、当時1社だけ取引があった建材メーカーから、外壁材の金型製造の依頼が入った。住宅建材の場合、外壁以外にも瓦、天井、内装の壁向けのものなど、さまざまな種類の金型が必要になる。三木製作所もこうした住宅建材用の金型の受注が徐々に増えていき、気がついたときには建材メーカーからの案件が全体の8割を占めるようになっていた。

 こうして震災を機とした住宅建材用の金型受注が増えたことで、三木製作所は経営難を免れた。しかし三木社長は「これでは顧客が自動車関連メーカーから建材メーカーへとシフトしただけで、特定の業界の景況に業績が依存する体質は変わっていない。このままでは三木製作所はまた同じことを繰り返す」と考えたという。

 経営が5〜10年安定していれば、これからも同じように仕事が続いていくと楽観的に考えてしまう人は多い。しかし、そんなことはあり得ない。「状況がいつ変わるか分からないというのは、バブル崩壊で身にしみていた」(三木社長)。

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