統計の食わず嫌いを直そう(その8)、統計的に「王様の耳はロバの耳」と言うために山浦恒央の“くみこみ”な話(80)(4/4 ページ)

» 2015年12月01日 07時00分 公開
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2.4.1 μ1 ≠μ2の場合(両側検定)

 図.2は有意水準5%の両側検定の場合の、採択域と棄却域をグラフ化したものです。

図.2 両側検定の棄却域と採択域 図.2 両側検定の棄却域と採択域

 両側5%の場合は、「検定統計量 < -1.96」、または、「検定統計量 > 1.96」に入るならば(グラフの赤い部分に入るならば)、帰無仮説は棄却されることになり、「王様の耳は国民の耳とは違う(ロバの耳かネズミの耳かはさておき)」であると判断できます。一方、「-1.96<検定統計量 < 1.96」の場合、帰無仮説を採用するため、「王様の耳は国民と同じ」となります。

2.4.2 μ1 >μ2の場合(右片側検定)

 右片側検定の場合、採択域と棄却域は次のようになります。両側検定と同様に、赤い部分に入っていれば、帰無仮説を棄却でき、白い部分に入っていると帰無仮説が採択されます。すなわち、「王様の耳は国民の耳より長く、ロバの耳である」と判定できるのです。

μ1 >μ2の場合(右片側検定)

2.4.3 μ1 <μ2の場合(左片側検定)

 左片側検定の場合は、次のようになります。よって、統計量<-1.645の場合ならば、帰無仮説を棄却でき、そうでなければ帰無仮説を採択します。

μ1 <μ2の場合(左片側検定)

3. まとめ

 プロセス改善効果を分析することは重要なことですが、全データから分析を行うことは意外と困難です。今回は、限られたデータを使用した母平均の差の検定の理論的な部分を説明しました。実際に適用する際には、データの数、データの分布、統計式、対応の有無などを考慮する必要があります。

 次回は、例題を用いて作業手順を紹介します。

【 筆者紹介 】
山浦 恒央(やまうら つねお)

東海大学 大学院 組込み技術研究科 准教授(工学博士)


1977年、日立ソフトウェアエンジニアリングに入社、2006年より、東海大学情報理工学部ソフトウェア開発工学科助教授、2007年より、同大学大学院組込み技術研究科助教授、現在に至る。

主な著書・訳書は、「Advances in Computers」 (Academic Press社、共著)、「ピープルウエア 第2版」「ソフトウェアテスト技法」「実践的プログラムテスト入門」「デスマーチ 第2版」「ソフトウエア開発プロフェッショナル」(以上、日経BP社、共訳)、「ソフトウエア開発 55の真実と10のウソ」「初めて学ぶソフトウエアメトリクス」(以上、日経BP社、翻訳)。


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