日本初の惑星探査を目指す「あかつき」、5年越しの再チャレンジ(1/4 ページ)

日本初の惑星探査を目指す探査機「あかつき」が、金星周回軌道へ「2度目の投入」を試みる。5年前に一度失敗しており、今回がラストチャンスになる。

» 2015年12月06日 17時30分 公開
[大塚実MONOist]

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の金星探査機「あかつき」が2015年12月7日、金星周回軌道への投入を実施する。5年前の同日、あかつきは一度金星に到着。周回軌道への投入を試みたものの、エンジンのトラブルで失敗していた。この前代未聞の再挑戦を成功させ、日本初の惑星周回を実現できるかどうか、注目が集まる。

軌道投入に再挑戦するあかつき(C:JAXA) 軌道投入に再挑戦するあかつき(C:JAXA)

5年前の悲劇

 あかつきは日本初の金星探査機。2010年5月21日にH-IIAロケット17号機で打ち上げられ、半年後に金星に到着、そこで軌道制御エンジン(OME)を噴射して、金星の周回軌道へ投入する計画だった。ところが、噴射から2分半ほどが経過したところで探査機の姿勢が大きく乱れ始め、噴射を中止。そのため減速が足らずに、金星を通過してしまった。

姿勢データ。152秒あたりから大きく乱れ始める 軌道投入失敗時の姿勢データ。152秒あたりから大きく乱れ始める

 この5年前の軌道制御「VOI(Venus Orbit Insertion)-1」では一体何が起きたのか。当初、あかつきで初めて搭載された新技術のセラミックスラスターが原因とみる声もあったが、詳細な解析の結果、燃料の逆流を防ぐために設置されているバルブ(逆止弁)に問題が起きていたことが明らかになった。

 あかつきのOMEには、燃料と酸化剤を混合して燃焼させる2液式のエンジンが使われている。それぞれ、高圧ヘリウムによって押し出し、燃焼器内に送り込む仕組みだが、ヘリウムの配管を逆流すると爆発の恐れがあるため、燃料側と酸化剤の上流に逆止弁が取り付けられている。

 問題が起きたのは燃料側の逆止弁。詳しい原因についてはJAXAがまとめた報告書を参照して欲しいが、燃料側の逆止弁が詰まったことで、酸化剤が多い状態の異常燃焼となり、燃焼の温度が上昇。ノズルが破壊されたことで、横方向の推力が発生してしまい、探査機の姿勢が乱れたものと推測される。

 確かにセラミックスラスターが壊れたのは事実だが、セラミックスラスターの特徴の1つは耐熱温度の高さ。恐らく従来型のニオブ系合金を使ったスラスターであっても、同様の結果になっただろう。

不測の事態に備えた2段構え

 金星への軌道投入に失敗し、人工惑星となったあかつきは、太陽を周回。2011年11月に実施した3回の軌道制御と、2015年7月に実施した4回目の軌道制御により、2015年12月7日に金星に会合する軌道へと入った。

 メインエンジンであるOMEが使えなくなってしまったため、これらの軌道制御では全て姿勢制御エンジン(RCS)が使われた。RCSのスラスターは探査機の上面と下面に4基ずつ、合計8基が搭載されているが、本来は姿勢制御用のため、推力は大きくない。1基あたりの推力は23Nなので、4基あわせてもOMEの5分の1以下だ。その分、長時間の噴射を行う必要がある。

RCSの搭載場所。上側も下側もスペックは同じだ RCSの搭載場所。上側も下側もスペックは同じだ
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