日本初の惑星探査を目指す「あかつき」、5年越しの再チャレンジ(2/4 ページ)

» 2015年12月06日 17時30分 公開
[大塚実MONOist]

 今回の軌道制御「VOI-R1」では、上側のRCSを使う。金星に追い抜かれる形で接近するあかつきは、最接近(高度は500km程度)前後の8時51分から約20分間、噴射を実施。38.4km/sから38.2km/sへと、探査機を200m/sほど減速させ、金星周回軌道へと投入する計画だ。噴射は1233秒間行う予定だが、1100秒以上実施できれば周回軌道になる。

12月7日の運用。8時51分からRCSの噴射を開始 12月7日の運用。8時51分からRCSの噴射を開始
VOI-R1で減速し、周回軌道へ投入する計画 VOI-R1で減速し、周回軌道へ投入する計画
金星周回軌道投入前後の軌道

 RCSはこれまでの軌道制御での実績もあり、今回問題が起きるようなことは無いだろう。懸念するとすれば、噴射時間がこれまでよりも長いこと。RCSは本来姿勢制御用であり、通常の運用では、長時間の連続噴射を行うようなことは無いからだ。しかしあかつきでは、今までに最長で10分間程度の噴射は実施しており、今回はその2倍程度。地上試験では1時間以上の連続噴射の実績もあり、特に不安は無い。

 しかし万が一ということもある。そのためあかつきでは、VOI-R1のあと、姿勢を反転。もし何らかの理由で上側のRCSの噴射が足りなかった場合、下側のRCSを追加噴射する「VOI-R1c」を実施する計画だ。姿勢反転までは全て探査機が自律で行うが、地上から探査機の速度変化はモニターできるので、VOI-R1cの噴射が必要かどうかは地上で判断し、探査機にコマンドを送ることになっている。

地球からの視線。VOI-R1の直後に姿勢を反転していることに注目

 燃料が残り少ないあかつきにとって、今回が正真正銘のラストチャンス。VOI-1の失敗では、早々に噴射を中断したことが幸いし、燃料を温存できたため、再挑戦する機会を得ることができたが、もう後はない。噴射に直接影響がないようなエラーは無視するような設定にしているとのことで、「捨て身」で臨む構えだ。

 ちなみにVOI-R1という名称であるが、この“R”には、re-(再)、regain(復帰)などの意味が込められているとのこと。追加で行う可能性があるVOI-R1cの“c”については、correction(補正)やcontingency(不慮の事態)といった意味なのだそうだ。

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