4Gの先にある世界、体感スループット100倍を目指す「5G」の行方5分でわかる最新キーワード解説

4G(LTE-Advanced)の次の移動通信規格として開発が進んでいる「5G」。最大10Gps、体感スループット100倍などの実現を目指す「5G」とはどんなものなのでしょうか。

» 2015年12月08日 10時00分 公開
[キーマンズネット]

 今回のキーワードはLTE/LTE-Advancedの次の移動通信システム規格となる「5G」。規格化はまだ先の話ですが、日本が掲げる目標は面積あたり容量で現在の1000倍、体感スループット100倍、ピークデータレート10Gbps以上、同時端末接続数100倍というハイレベルなもの。従来技術の延長だけでは困難なこの目標を、2020年までに実現しようと各社は日々奮闘しています。どんな技術が使われ、私たちの生活やビジネスをどう変えてくれるのでしょうか。

「5G」はどこまで来ているのか

 現在の最先端移動通信規格は「4G」と呼ばれるLTE-Advancedだが、その次の世代の規格となるのがまだ正式名称のない「5G」だ。詳細な仕様は何も決まっていないが、コンセプトはもうはっきりした。リードしているのはNTTドコモと総務省。実現時期の目標は2020年オリンピック/パラリンピック東京大会だ。残された時間は約5年。現在検討されている技術がそれまでにどれだけ洗練できるかが鍵になりそうだ。

  • 「5G」に求められること

 モバイルデバイスが隅々まで普及し、IoTデバイスが急増している現在、移動通信のレベルアップは不可欠だ。2015年6月の総務省調査によれば、同月平均トラフィックは1032.3Gbps(音声通話と公衆無線LANトラフィックを除く)、直近1年で302.4Gbps(約1.4倍。直近3年では3.76倍)増加している。

 LTE加入者数の増加や動画などの大容量トラフィックが増加要因とされているが、これから盛んになっていくであろうスマートフォンなどを対象にした4K/8K動画ストリーミングや、動画などを含むSNS、AR(拡張現実)技術を利用するアプリケーションやサービス、さらは触覚通信といった従来とは次元が異なるデータサイズのアプリケーションやサービスが増えていくことを考えると、トラフィックが増加し続けることは間違いない。飛躍的な移動通信の性能向上が必要なことは誰の目にも明らかだろう。

 国内では既に「本当の4G」であるLTE-Advancedサービスが始まっていて、現在では最大300Mbpsの移動通信が可能になった。2016年中には3.5GHz帯の導入によりそれを超える速度に発展することが見込まれているが、規格上の最大速度は3Gbps。しかも利用できる周波数帯域が限られるため、上限に行き着くはるか以前に限界を迎える。

 その限界を超える新規格が「5G」だ。最大速度3Gbps超は当然だが、どこまでの通信性能を目指すのか、世界各国の事情がそれぞれあるものの、現在では目標とする性能がほぼ合意されているという。図1にその目標値を示す。

図1 図1 2020年以降を目指した超大容量・超高速・超低遅延通信の実現により、多種多様なサービスのサポートを実現する次世代移動通信システム5G(資料提供:NTTドコモ)
  • 平方キロメートルあたりの容量は1000倍に

 どれだけ多くのトラフィックをさばくことができるかを示すのが「容量」の数値だ。2020年代の移動通信のトラフィック量は2010年比で1000倍以上になると見込まれている。それに対応できるシステム容量が必要だ。これが5Gの最も基本的な要件となる。

  • ユーザー体感スループットは100倍に

 移動通信のスループットが理論最大速度よりかなり低いことはご存じのとおり。都市部の駅やショッピングモールなどではトラフィックが多いために特に使いにくくなることが多い。時間帯によってもかなり違っていてユーザーの不満のもとになっているのだが、これを解消することも5Gのテーマの1つだ。そのためには飛躍的な高速化が必要になる。目標値はLTEとの比較で100倍程度の体感スピードの実現だ。どのような環境・時間帯でも1 Gbps以上のデータ伝送速度の達成が目標にされている。ピークデータレートは10Gbps以上が目標になる。

  • 無線区間は1ms以下の低遅延化

 ARアプリケーションやIoTデバイスのリアルタイム通信をはじめ、高速なレスポンスが不可欠なサービスが増えることが見込まれるため、ネットワーク遅延をできるだけ抑える必要がある。これは無線通信だけで達成できることではないが、少なくとも無線区間の遅延を1ms以下にすることが目指されている。

  • 多数の端末の同時接続

 各種のスポーツ会場やイベント施設のような多人数が集まるところでは、同時に接続する端末が多いためにつながりにくくなるのが問題だ。クラウドサービスへの同時接続がより一般的になり、IoTデバイスが急増することを加味すると、特に端末が過密になる場所では同時に接続できる台数を増やす必要がある。これもLTEとの比較で100倍以上の同時接続を可能にすることが目標とされている。

  • 低コスト・低消費電力化

 こうした飛躍的な性能向上を目指す一方で、それに比例して電力消費が増えるのはコスト面でも環境負荷の面でも許されない。端末の消費電力を抑えてバッテリー寿命を延ばすことはもちろんだが、ネットワーク側の電力消費を低減することが肝心だ。これには無線設備だけでなく、基地局と交換局を結ぶ有線ネットワーク(バックホール)を含めた取り組みが必要になる。

どのように目標をクリアしていくのか

 この高い目標に近づくために、世界で技術改良や新技術開発の取り組みが行われている。そのスケジュールについては(日本の思惑ではあるが)、図2に示すようなものが考えられている。

図2 電波政策ビジョン懇談会最終報告書:平成26年12月(資料提供:総務省)

 図2の通り、日本では2020年の5G実現を目標としている。2018年に冬季五輪を開催する韓国も、2018年の5Gトライアル、2020年の5G導入を宣言している。2015年9月に主要標準化団体の3GPPが関連ワークショップを開催しており、ITUも2016年から本格的な標準化プロセスをスタートさせる。2020年の5G実現に必要な規格化のゴールは2018年。他の国は周波数帯の問題もあり、必ずしも足並みがそろっているわけではないが、3GPPではおおむね2018年までの仕様決定を目指す流れにはなっているようだ。

5G実現を図るための技術的ポイントとは

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