真横から見た新型「プリウス」デザインの変化車両デザイン 新型プリウス インタビュー(1/2 ページ)

トヨタ自動車が2015年12月9日に発売した新型「プリウス」はデザインにも力を入れている。横から見た姿を3代目プリウスと見比べると、新たなデザインの狙いが見えてくる。

» 2015年12月11日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 トヨタ自動車が2015年12月9日に発売した新型「プリウス」は、その外観を真横から見ると、先代(3代目)プリウスとの違いがよく分かる。新型プリウスのプロジェクトチーフデザイナーを務めた、同社デザイン本部トヨタデザイン部第3デザイン室長の児玉修作氏は「走りの良さが伝わる意匠、空力特性の追求、視界の向上が新型プリウスのデザインテーマだった」と話す。トヨタが推し進める「もっといいクルマづくり」に向けた取り組みTNGA(Toyota New Global Architecture)によって可能になったデザインもあった。

ルーフピークの前出しと後部座席の居住性という二律背反

 TNGAで新たに開発したプラットフォームは、走行性能を向上するために低重心化を図った。そのプラットフォームを採用した新型プリウスは、先代プリウスと比較して全高が20mm、カウル高さが62mm、リヤエンドが55mm下げられている。

 プリウスの横から見た外観は「トライアングルシルエット」と呼ばれる三角形形状のコンセプトを2代目モデルから採用している。新型プリウスは、その三角形の頂点となるルーフピークを、先代プリウスと比べて170mm車両前側に移動した。

新型プリウス先代プリウス 新型「プリウス」(左)は3代目プリウス(右)と比べてルーフピークが車両前側に移動している (クリックして拡大)

 このルーフピークの前出しは、ルーフピークからリヤエンドまでの傾きを、空力性能で最適とされるものにすることが狙いだった。その上で、車両の全高を低くすることによる前面投影面積の効果が加われば、空気抵抗係数(Cd値)を低減できる。実際に新型プリウスのCd値は、先代プリウスの0.25から0.01の低減となる0.24を達成した。

 しかし全高を下げ、ルーフピークを前出しすると、後部座席の乗員にとって天井が低くなってしまう。後部座席の高さを工夫しようにも、後部座席の下には駆動用バッテリーと燃料タンクが配置されている。このレイアウトは荷室の容量を拡大するためのものだ。駆動用バッテリーの配置をトランクから後部座席の下に移動させたことで、荷室の床面は先代プリウスより110mm下がり、ゴルフバックを4個積める容量となった。

カットモデルの荷室カットモデルのリアシート下 荷室の拡大やレイアウト変更、居住空間の確保の同時実現が課題に (クリックして拡大)

 実は先代プリウスは、トライアングルシルエットを確立した2代目プリウスと比べて、ルーフピークが車両後部側に移動している。これは、2代目プリウスで課題となっていた後部座席の居住性を解決することが目的だった。

 では新型プリウスは、ルーフピークの前出しと後部座席の居住性という二律背反をどのように解決したのだろうか。ここで重要な役割を果たしたのが、新型プリウスがTNGAの第1号車であるという事実だ。「従来のトヨタ自動車における車両デザインは、既に出来上がったプラットフォームに合わせて行うものだった。TNGAの第1号車である新型プリウスでは、全体最適を目指すTNGAにおける低重心の実現とバッテリーの配置の見直しが同時並行で進んだ。そこに車両デザインの担当者も加わることによって実現できたのが新型プリウスのデザインだ」(児玉氏)。

 具体的には、全高の低減とルーフピークの前出し、駆動用バッテリーと燃料タンクの新たなレイアウトは変えずに、後部座席のヘッドクリアランスを確保するため、関連部門とやりとりして骨格の断面やバッテリーユニット、内装トリムをmm単位で薄くすることで問題を解決した。児玉氏は、「低重心だけでなく他の要求も同時に実現するデザインというのは、TNGAでなければできなかっただろう」と語る

後部座席のヘッドクリアランスを確保 後部座席のヘッドクリアランスを確保 (クリックして拡大)
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