つながる価値をスポーツへ、家電のCerevoが挑む新ジャンルのモノづくりベンチャーニュース(2/3 ページ)

» 2015年12月21日 07時00分 公開
[陰山遼将MONOist]

スポーツ用品としての耐久性をどう確保したのか

 Cerevoの代表取締役CEOを務める岩佐琢磨氏は、同社の製品開発コンセプトについて「電気が通ってないものをスマホ/ネット連動で改革する」と述べる。同時に非常にニッチなニーズ、あるいはまだニーズがあるかどうか分からないような領域に向けた製品を開発し、少ない台数をグローバルに販売していく――この“グローバルニッチ”というのがCerevoの開発方針の戦略だ。これまでの製品は50カ国以上で販売実績があり、現在の販売シェアも海外比率の方が高いという。

Cerevoの岩佐氏

 SNOW-1もこうしたコンセプトに基づいて開発した製品だ。しかしこれまでの家電製品と圧倒的に異なるのが強度や防水性を求められる点。SNOW-1はCerevo初の防水製品で、開発工程での苦労も多かったという。多くの製品を1年未満で開発から量産まで持っていくことが多いCerevoだが、SNOW-1の開発期間は1年と数カ月だ。

 CerevoはDMM.make AKIBAを中心に日本国内で製品開発を進め、生産は中国を中心としたアジアのEMSに委託するかたちをとる。しかしSNOW-1のような電子機器でありスポーツ用品でもあるという製品は前例もないため、従来の委託先だけでは耐久性試験なども含めて生産を完結できない。そこでEMS工場で先にセンサーなどを搭載する中核部分を製造、その後輸送してバインディング製造工場で残りの製造と組み立てを行う必要があったという。

 強度や防水性については新たこうした領域に知見のあるエンジニアを加え、切削加工機や3Dプリンタで試作機を製作。日本が夏季のシーズンはスイスの雪山で強度試験や防水試験を繰り返したという。電子機器を内蔵する部分では、2つの外蓋を重ね合わせる際に、防水性を確保するために接合部分に均一に力が加わるようにする必要があるなど、従来の家電開発よりさらにシビアな開発と検証を進めた。マイナス40度の状態で圧力を加える耐久性試験も通過しているという。

試作機たち(クリックで拡大)

 「スポーツ用品を開発するということで、防水性や耐久性の部分で多くの人に大丈夫なのかと心配された。製造工程で行われる一般的なバインディングの耐久性試験はクリアすることができたし、同時にコンセプト段階で描いていた機能をほぼ全て実装することができた。『本当にそんなもの作れるの?』と思ってしまうものでも、チャレンジして作ってみることが大事。やってみることでノウハウも蓄積される。今後も別のスポーツ製品の開発を手掛けていく予定」(岩佐氏)。

 モノを売るハードウェアベンチャー企業にとって在庫数の管理は重要なポイント。Cerevoでは「ShipeWire」という物流サービスを利用して、グローバルに在庫拠点を管理しているという。これまでは過度に在庫を抱えないためにも、各製品のサイズは基本的に1種類のみの展開だった。しかし今回のSNOW-1は実際に人が装着するという性質の製品であるため、こちらもCerevo初となるMサイズとLサイズの2種類を展開するとしている。

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