構造物破壊の一要因にもなるカルマン渦の解析無償ソフトで流体解析(3)(2/3 ページ)

» 2016年01月12日 10時00分 公開
[伊藤孝宏MONOist]

カルマン渦の事例

 今回は解析事例として、カルマン渦を紹介します。Flowsquareで円柱後方に発生するカルマン渦をシミュレートします。次に、円柱の断面形状を変化させてカルマン渦の発生状況を見ることで疑似体験してみます。

 円柱周りの流れのモデルと解析結果をkarman_1.zipをダウンロードしてください。

 ダウンロードしたkarman_1.zipを右クリックしてから「全て展開」とすると、モデルデータが収納されたbkupフォルダ、計算結果が収納されたdumpフォルダ、画像データが収納されたfigsフォルダが出来上がります。円柱周りの流れを計算するには、bkupフォルダ内のbc.bmpとgrid.txtファイルで、flowsquare.exeの隣の同名のファイルを上書きして、Flowsquareを起動して、本連載第1回で説明した方法に従ってシミュレーションしてみてください。

 解析モードで計算結果だけを見る場合は、Flowsquareを起動して、プロジェクト名入力画面で、「karman_1 −a」と入力し、計算結果を読み取ります。前回のオリフィス流れの解析と同様に、円柱周りの流れの解析においても、正しい解析を行うには、十分に大きな解析空間を持たせる必要があります(円柱前方には円柱直径の10倍以上、円柱後方には円柱直径の20倍以上、主流と直角方向には円柱直径の10倍以上が目安となります)。ただし、これらの条件を満足するようにモデルを作成するとFlowsquareでは、膨大な計算時間が必要となるため、便宜上、円柱付近の空間だけをモデルとしています。実務で用いるような解析を行う際は、十分な解析空間を設けるようにしてください。

 図1と図2はfigsフォルダ内の画像ファイルを表示したもので、0.01秒ほど異なった時点での流れの様子です。

図1:円柱周りの流れ(0.95秒)
図2:円柱周りの流れ(0.96秒)

 図の灰色の部分が円柱で、流れについては、青色から赤色ほど流速が大きいことを示す速度コンターを表示しています。図を見ると円柱後方に流速の遅い部分が発生し、中心線に向かう方向に渦を描いていることが分かります。これがカルマン渦で、図1と図2を比較すると、渦の位置が上下に変化していることが分かります。つまり、円柱後方には、上から下へあるいは下から上へと、交互に渦が発生します。発生した渦は運動量を持っているため、円柱には反作用として渦の発生向きと逆向きに力が加わります。そのため、円柱には上から下へあるいは、下から上に向かう力が交互に働きます。

 以下は画像をつないで動画にしたものです。

円柱後方に発生するカルマン渦

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