陽子線ラインスキャニング照射法による治療を開始、照射時間を短縮医療機器ニュース

住友重機械工業は、国立がん研究センター東病院と共同で開発した「陽子線ラインスキャニング照射法」による患者への治療第1例が、2015年12月中旬に全37回の治療を完了したと発表した。

» 2016年01月20日 08時00分 公開
[MONOist]

 住友重機械工業は2016年1月5日、国立がん研究センター東病院(NCCH-E)で、同病院と共同で開発した「陽子線ラインスキャニング照射法」(以下、ラインスキャニング)による患者への治療第1例が完了したと発表した。同照射法による陽子線治療としては世界初の事例で、2015年12月中旬に全37回の治療を終えたという。

 現在、陽子線治療では、細いペンシル形状のビームを標的がん細胞の形状に合わせて3次元的に照射するスキャニング照射法が注目されている。従来の拡大ビーム法に比べ、より複雑な形状のがんの治療が可能で、周囲の正常細胞への照射線量の抑制が期待されている。また、患者ごとにビーム成形器具を製作する必要がないため、ランニングコストを低減できるという。

 同社の陽子線治療システムは、陽子線発生装置として、連続かつ高線量率ビームを安定して発生させるサイクロトロンを使用している。今回、同システムが持つスキャニングに対する優れた適応性を生かし、スキャニング手法としてラインスキャニングを採用した。

 ラインスキャニングでは、ペンシルビームの走査速度を変調させつつ、連続的に照射する。球状のビームを断続的に照射するスポットスキャニング照射法など、他のスキャニング手法と比較して、照射時間の短縮が見込まれている。将来的には、呼吸で動く臓器の治療に対しても効果が期待されるという。

 治療が行われたNCCH-Eは、同社の陽子線治療システムの納入先であり、共同で開発した多目的照射ノズルを所有。そのため、ラインスキャニングと拡大ビーム法、それぞれの特性を生かした使い分けが可能だという。また今後、ラインスキャニングによる治療は、長野県の相澤病院、台湾・長庚紀念病院、韓国・サムスンメディカルセンターで、2016年初頭から順次開始される予定だ。

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