原価低減に欠かせない科学的アプローチを学ぶ【後編】実践! IE;磐石モノづくりの革新的原価低減手法(9)(2/5 ページ)

» 2016年01月22日 10時00分 公開

ワークサンプリング法の統計的考え方

 「ワークサンプリング法」の原理は次のように説明することができます。例えば、ある日の朝8時から夕方5時までの昼休み1時間を除く480分(8時間)の作業内容を「ストップウォッチ(法)」による時間測定によって、A作業123分、B作業303分、その他付帯作業(C作業)54分の結果データが得られたとします。その場合1日の勤務時間480分に対する百分率は以下の通りとなります。

  • A作業=123分÷480分×100%=25.6%
  • B作業=303分÷480分×100%=63.1%
  • C作業= 54分÷480分×100%=11.3%

 もし、1日480分を32回(480分÷15分)に刻んで、これを乱数表で無作為に時刻を選んで、延べ16回の観測回数(巡回回数)で瞬間的に作業内容を観測した場合、それぞれの作業の出現度数を数えて、その百分率を求めると以下の通りとなります。観測した結果を集計し、各作業項目の出現度数を観測数で割った値がその項目の時間比率となります。また、その結果は「ストップウォッチ(法)」による測定結果とあまり大きな差がないという結果が得られるはずです。

  • A作業= 4回÷16回×100%=25.0%
  • B作業=10回÷16回×100%=62.5%
  • C作業= 2回÷16回×100%=12.5%

 観測時刻は、あくまで無作為に選んだものでなければなりませんので、等間隔にはなりません。また、観測回数が多いほど、その結果は誤差が小さくなり信頼できるものとなります。

 「ワークサンプリング法」は、バーンズ(Arthur F. Burns)の確率理論の考え方を適用したもので、大きな母集団(グループ)から無作為に抽出した抜き取り試料が大きな母集団と同じ形の分布を持つ傾向があるという性質に基づくものです。従って、試料が十分に大きければ、その試料の特性は元の母集団の特性と近似します。

ワークサンプリング法の統計的考え方

 統計理論に基づく試料は、無作為に選び出されなくてはなりません。いわる全数調査といわれる対象の全体について調べる方法もありますが、手間が掛かり過ぎことと全数調査を行うこと自体が不可能に近いために全数調査が用いられることはほとんどありません。仮に全数調査を行う方法を考えてみると、被調査対象者に1人の記録者が終日監視しているような状態で、仕事の内容を記録していくか、被調査対象者に仕事の内容と所要時間を記録してもらうというような方法が想定されます。しかしこれでは経済的な方法とはいえませんし、後者の方法では、データの精度にも問題がありそうです。そこで、一般的に行われる方法が標本調査です。

 この標本調査は、母集団から、その一部を抽出して調査する方法です。抽出によって得られた標本のことを“サンプル“といいます。ワークサンプリングの母集団は仕事(の内容)です。つまり、“ワーク”です。

 「ワークサンプリング法」の統計的考え方は、標本を用いて母集団の特性を推定することにあります。従って、標本は無作為に抽出さなければなりません。何らかの意図を持って母集団から抽出した試料について確率論を利用する統計学には応用できません。

 確率論は、作為を持つ対象には応用できませんので、この「無作為」という行為はとても重要なことです。「ワークサンプリング法」においては、観測時刻や観測ルートは、乱数表などを用いて決定していくのはそのためです。以上のことを踏まえて、「ワークサンプリング法」では、以下のことがいえます。

  • 「ワークサンプリング法」は、確率の法則に基づくもので、母集団から無作為に抜き取った試料の特性は、元の母集団に酷似した性質を持つ
  • 試料の数を増やして試料数を十分な大きさにすれば、その特性分布は、元の母集団の特性分布曲線とほとんど一致する
  • 試料数を増やせば、それだけ調査の経費が増加するので、経済性と信頼度を考慮して、試料数(観測数)を決めなければならない
  • 「ワークサンプリング法」に統計的理論を用いるためには、毎回の観測行為が独立していなければならないので、次の事項を考慮する必要がある
    • 観測時刻が無作為抽出であること(乱数表によって“無作為観測時刻表”を作成するなどの方法が採られる)
    • 予備調査を行って、一巡する所要時間を調べて最小観測時間間隔を決める(一般的には、15分以上の間隔を空ける)
    • 巡回を行う際の出発点や巡回経路も無作為であること

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