「とにかく前倒しでCAEやったら何とかなるんちゃうの?」――本当のフロントローディングとはCAEイベントリポート(3/4 ページ)

» 2016年01月22日 10時00分 公開
[小林由美MONOist]

オムロンの事業密着CAE

 同社では、これから伸びそうな製品や全社製品に共通して使えそうな技術を持っているなど、特に強化したいと考える事業部に、GMIのCAE専任者が出向などして入り込んで、CAE活用推進を行っている。最終的にはGMIの技術者がいなくても、事業部内の技術者自身でCAEを用いて検証・解析できることを目指す。

 このような取り組みにより、必要とする技術課題を先取りして、CAEで戦略的に検討可能だという。また設計上流でのCAE活用で開発期間の短縮を実現し、「事業成果出し」にこだわっているとのことだ。

 事業密着型のフロントローディングCAEと併せ、CAEの共通技術蓄積および展開、人財育成、インフラ整備に取り組むことで、人材や関連手法、インフラを全社で共有可能にしている。生産向けCAEと商品開発向けCAEの相互連携による手法構築も検討・実施している。

事業密着型で想定課題をたててそれを解決。さらに全社展開へ(出典:オムロン)

 オムロンでは各事業部の設計規定やデザインレビューなどの手順にCAEの実施をひもづけているが、これらは全ての事業で共通化するのは難しいので、CAEの組み込み方法は事業それぞれである。

開発プロセスへのCAE検証組み込み方法(出典:オムロン)

 このような環境で、CAE専任者たちを事業密着のプロジェクトに投入しさまざまな事業の経験を積ませた後に、全社横ぐしのプロジェクトの方へ異動させて、そこでもそれぞれのCAE専任者たちが培った技術を共有して技術力を強化する。それと併せ、大学など研究機関や、CAEベンダーやコンサルティング会社とも連携しCAE技術の強化を図っている。

オムロンの人材ローテーションと技術共有の流れ(出典:オムロン)

 CAEツールについては、これまで各事業部門が独自に選定してきたが、今後は全社でツール情報を一元管理し、事業部門のツール選定を本社の専門人財がサポートする体制を検討しているという。「将来は計算環境については、外部のリソース、例えばクラウドサーバを使うことも出てくるだろう」(岡田氏)。

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